留守電
「でも…今考えても不思議なことばっかり起きたよね。オサム君が開けたらドアが開いたり、通じていないはずの電話が鳴ったり」
「あのときさ、オサムどっかに電話かけてたろ?あれ、どこの番号にかけたんだ?」
「ウチ…だよ。ここの家の電話番号。今は使えなくしている電話だけどね」
「そりゃ、知らないひとの家にかけたらいたずら電話になるから、おれも自分ちの番号まわしてみてたもん」
「それはあたりまえでしょ。だけど、使えなくしてるっていうのは?オサムくんち電話おいてないの?」
「ううん。あるよ。でも今はジャックっていうの?あれを抜いて、かかってこないようにしてるんだ。3年前から」
「3年も?どうして?」
「新しい留守電が入って、前の音源が消えちゃったら、いやだから」
「消えちゃう?新しいテープと交換して、大切なのを別に残しておいたらいいんじゃないの?」
「うちの電話機、新しもの好きの父さんが選んでて、留守電がテープ式じゃないらしいんだ。そして入ってる留守電は、全部父さんがかけてきたもので。最後の声も、入ってる」
「最後?この前の探検の時、電話にむかって『父さん』って言ってたじゃないの?」
「うん。ぼくの父さん、3年前に死んじゃってるんだ。出張に向かう途中に、事故で。事故にあって、自分で救急車呼んで。救急車が来るまでの間にってウチに電話かけて。その時の留守電が残ってるんだ。その時母さん仕事に行ってて。警察から電話があって、急いで病院に行ったけど間に合わなくて。やっと家に帰ったら、父さんの留守電が残ってて」
「その声が入ってるものって、取り出して交換とかってできないの?」
「母さんも最初はそう考えて、電話機やパソコンに詳しい人に聞いてたみたいだけど。なんだか技術的にいろいろあって難しいって言われたみたいで」
「じゃあさ、電話機を買い替えるっていうのは?」
「それも、ちょっとは考えたみたいだけど。今の電話機は父さんが選んだものだから、思い出としていつもの場所に置いておきたいって。だけどもう一台、別の電話機を置く場所はないし。仕事の電話も親戚とのやりとりも、スマホで済むからいいかなって」
「なんだかわかんないけど…。カイヤクとかはしないの?電話機は持ってていいんだし。」
「もしも、父さんが電話をかけてくることがあったら、この番号にかけてくるから。その時に知らない誰かが電話を取ったら、父さん困るでしょうって母さんが」
「そう…なんだ」
3人の間にしばらく沈黙が続いた。
続




