なにがあったか
「母さん。心配かけてごめんなさい」
「ほんとに。一時はどうなることかと思ったわよ。とりあえず今は、ゆっくりやすみなさい。そのかわり、治ったらたっぷり、お説教につきあってもらいますからね」
「ええ!そんなあ」
「にいにい!ママ、にいにいのこと、すごくすごくしんぱいしてたんだよ。ママを困らせたら、だめじゃない。ちゃんとお説教聞きなさい」
「なんだよ。ミホまでそんなこというなよ」
熱が下がって、さらに二日入院したぼくは、やっと退院の許可をもらえた。
その二日の間には母さんからのお説教と、『空家』でなにをしていたかの説明をさせられた。
ぼくは、アキラから『お化け屋敷とうわさされる空家』の話を聞いたことからを、思い出せる限り話した。
アキラから誘われたこと。
最初は、行くつもりがなかったけれど、やっぱり興味がわいて、きもだめしするつもりになったこと。
家の周りを見て、寂しい感じを受けたこと。
カギがかかっていたはずのドアが、自分が触ったら開いたこと。
ドアから、呼ばれたような気がしたこと。
母さんはぼくの話を、最後まで口をはさまずに聞いてくれた。
『夢を見てたんだ』と笑われそうで言うのが怖かった、『父さんと、つながっていないはずの電話で話した』ことも、ちゃんと笑わずに聞いてくれた。
「そうだったの」
そう言って、話し終わったぼくをぎゅっと、抱きしめてくれた、
「そんな話、信じられるはずないでしょう?って思わなかったの?」
ぼくは、母さんに聞いてみた。
「あの人なら、お前の父さんなら、そういうこともあるかもしれないわね」
かあさんからは、そんな分かったようなわからないような返事が返ってきた。
退院して一週間がすぎたころ、アキラとサオリがそろってお見舞いに来てくれた。
「調子はどう?」
「心配かけて、ごめんね。もうすっかり元気だよ。それと、アキラありがとう。お父さんに頼んで、ぼくを連れて帰ってくれたって聞いたよ」
「大したことじゃないって。もともと引っ張り込んだのはおれだし」
そう言ってアキラは頭をかいた。
続




