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ぼくの・夏  作者: 奈那美
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最後の部屋

最後の部屋は、いままでのふたつの部屋よりもずっと大きく、床も畳ではなく板張りになっていた。

扉を入った左側に、うちと同じような台所の流しっぽいものがあって、正面のかべには大きい窓と中くらいの窓。そして部屋の右側には大きい窓。

そうしてもうひとつ、見なれないものが置いてあった。

「この部屋だけ、なにかのこってるよ」

そう言ってぼくは、家に入るときに感じていたためらいも忘れて、部屋の右側の窓のそばに近づいた。

アキラとサオリもあとに続いて入ってくる。

 

三人の目の前にあったものは、腰よりちょっと高いくらいの幅が狭い台と、その上に乗った黒いもの。

黒くて、両手でつかむにはちょっと大きいかな?と感じる大きさだった。

表面がつやつやしていて、四角いような三角のようなかたちで、こちらをむいている斜めになったところには、まるい円盤のようなものがついている。

今まで見たことがない、変なもの。

「これ、なんだろう?」

初めて目にしたぼくは、疑問を口にした。

 

「あ!私、これ知ってる。これ、『電話』よ。おばあちゃんちで見た写真に写ってた」

「電話?うそだろ?四角くないし、黒いし、でっかいし」

ぼくが思ったのと同じことをアキラが言ってくれた。

「私の家の電話も、白くてこんな形じゃないよ。でも、さいきんはその電話も、ほとんど使ってないんじゃないかな。ママたちはスマホばっかり使ってるし。だから、おばあちゃんちに行って、おばあちゃんやおじいちゃんの昔の写真を見せてもらったときに写っていたのを見て、私も聞いたのよ『これ、なあに?』って。そうしたら、昔は電話は、みんなこんな形だったんだよって言われて。つい『うそ?!』っていって怒られちゃったもん」

「でもさ、電話って言われてもボタンがないんじゃ、かけられないだろ?画面だってないし」

「それはね、ここ」

サオリが円盤みたいな形のものを指さした。

 

「ここに丸い穴があいてて、中に数字が見えてるでしょ?この穴に指を入れて、回してかけるんだって」

「回すの?押すんじゃなく?」

「おばあちゃんは、そう言ってたけど」

「お~!おれやってみたい!」

アキラは、そういったかと思うと、サオリが『勝手に触っちゃダメ!』と制止するのも聞かずに、1の数字に指をいれて左に回そうとしした。

「あれ?回らないぞ?こわれてるんじゃね?」

「逆には?右には回らないの?」

「右かあ。右ね」

と今度は右に回してみる。

「お!回った!でも、なんかでっぱりがあって、そこでとまるぞ?」

「回すのって、そこまでなんじゃないの?」

「ふうん…どっかに、かけてみようかな」

いたずら好きのアキラは、自宅の電話番号を回している様子だった。

 

 


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