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ワールドタワー〜アイアンロード編〜  作者: ナイヤン
ハーヴェイク編
2/15

出発進行

「な、何ですかこれは……」


「話は後やよ、ウェイトさーん!くそおらんのか!?ドゥー!ドゥー!おるか!?」


 すると一番先頭の車両から何処か儚げで、尚且つ凛とした雰囲気を醸し出す背の低い銀髪の少女が降りて来た。


「どうしたんだい?もしかしてあの街から追い出されたのかい?」


「ちゃうわ!話は後でするから取り敢えずこの子何とか出来んか!?」


 ニーさんは担いでいたアイニーをドゥーと呼んだ少女の前で下ろすと、座り込んだ。


「……ふぅん?」


 少女は興味深そうに屈み込むと目を赤くしてもがくアイニーよ額に手を置いた。


「落ち着いて……そう良い子だ」


 聞いているこちらの胸がときめく様な魅惑的な声で呟くとアイニーの動きが止まり目を閉じた。


 そして、暫く額を撫でていると納得した様に小さく頷くと、額から手を離して立ち上がった。


「ん、良いはずだよ」


「え?え……あ、アイニー!!」 


 アイニーは閉じていた目を開けて周りを見回した。


「あ、あれ?ここ何処?……えっ?何で縛られてるの?」


「解いてあげるね」


 ドゥーはアイニーを縛っている縄を緩めて、騎士が姫を立ち上がらせる様に手を持って立ち上げた。


「何処か悪いところはないかい?」


「え、う、うん……」


 少し赤い顔で頷くアイニーにドゥーは笑いかけた。


「じっちゃ!なして返事せんだ!?」


「そんな大声出さんでもワシには聞こえるわい!全く……」


 すると、列車の二両目あたりの方からニーさんともう一人知らない男の声が聞こえた。


「あぁ、私は出発の準備をしておかなければね……二人とも手伝ってくれるかい?」


「は、はい!」


「……」


 ハーミュラとアイニーはドゥーについて歩き出した。


 そしてやはり、ハーミュラは目の前の少女が何者なのか聞かずにはいられなかった。


「き、君は一体何者なんだ?」


 ドゥーは少し立ち止まって振り返ると、二人に薄らと笑って儚げに、


「それは、時間がない今話す事じゃないさ、でもすぐに話すことになるよ、さぁ、急ごう、時間はもう無いみたいだからね」


 と言って歩き出した。


「……何なんだ?」


 と、首を傾げて歩き出したハーミュラだったが、アイニーが歩き出さないのに少し心臓が跳ね上がる思いをしながらゆっくりと振り返った。


 彼女の表情は何処か夢見心地で、少し顔を赤らめて歩いてゆくドゥーの後ろ姿を見つめていた。


「……アイニー?」


 ハーミュラが呼びかけるとアイニーはハッとした様子で顔をペチペチと叩くと、真剣な顔持ちで歩き出した。


「早く行くよ」


「えぇ……」


 そうして三人は隠していた食料や機材をありったけ車両に積み込むと、老人とニーさんが地図を囲って話し合っている所に向かった。


「最初は工房が沢山あるメイカーを目指すべきやろ」


「だな、だが守りは硬いぞ、それにどうやって『中央権能』までドゥーを運ぶ?街は絶対に不味いぞ」


「トッチー!他に地図ないか?」


 ニーさんは棚から色々な資料を引っ張り出しているトッチーに声をかけた。


「もう無いて!周りにアクセスかけても無理やし!」


「そうけ……え、待て、アクセスしたんけ?」


「そらするやろ」


「このクソバカ!」


 その瞬間トッチーが溶接した筈の入り口がドンドンと音を立てた。


「こぉのアホンダラ!逆探知されるに決まっとろぉが!」


「ご、ごご、ごめんて!」


「ドゥー!出せるか!?」


「任せて」


「窓、扉を全て閉めろ!」


 ハーミュラとアイニーは走って全車両の全ての窓や扉を閉めてロックを掛けた。


「コッチは大丈夫です!」


「ニード!ドゥー!」


「気合入れろよ!初めての出発やよ!」


 車両のアナウンスからニーさんの声が聞こえて、車両が稼働を始めた。


『起動シークエンス!あと5秒待って!」


 その瞬間溶接した扉が吹き飛ばされて武装したロボットやアンドロイド達が雪崩れ込んできた。


「封じ込めシールド展開!」


 トッチーがそう言ってスイッチを押すと、扉から少し離れた地点から壁際までキッチリとシールドが張られた。


『シールドに動力を少し割くからあと30秒!』


 しかし、シールドが張られる前に何体かのロボット達がシールドのこちら側にやって来てしまい、列車に張り付いた。


「クソ!トッチー!出るぞ!」


「あいよ!」


 そうスピーカーから声が聞こえると、パイルバンカーを付けた特殊なアーマーを着たニーさんが張り付いたロボット達に向かって行った。


 しかし、窓が一つ壊されてロボットが数体中に入ってしまった。


「仕方あるまい、ワシが止めるから二人共前に行って操縦して来い!」


「え、え」


「行くよ!ハー!」


 戸惑うハーミュラの手を引いてアイニーは前の車両はと走り出した。


「クソ!ドゥー!まだか!」


『行けるけどこっちからじゃあ操縦出来ない!』


 と、二人が操縦室についた頃スピーカーからそんな声が流れていた。


「来たよ!」


『ハーミュラにアイニーちゃんだね!よし!私の言う通りにそこの機械を動かしてくれ……危ない!』


 突然背後からロボットが一体、アイニーに組みついた。


「うっ……うぉぉぉぉ!!!」


 ロボットの腕を一本へし折って吹き飛ばしたアイニーは振り返る事なく、


「ハーが操縦して!私がこの人を止めてるから!」


「……ごめん!頼んだよ!」


 そうしてハーミュラは操縦席に付いた。


『よし、先ずはそこのレバーを上げて……』


 そうしている内に外ではシールドが徐々に薄くなっていた。


「ヤベェよ!ニー!」


「まだ奥の手は使いたくないで!?」


 そう言っていると、車両全体が身震いして白い煙を噴き上げた。


「うわっ!」


「良いぞ!それでは改造列車『スターロード』出発進行!」


『それは私のセリフだし、改造等じゃ無いし正式名称は『せ……』」


 ドゥーが言い終わらない内に列車の地面が徐々に先頭を上にしていく様な形でせりあがってきた。


「手ぶくろと靴裏の磁場を展開しな!」


「あいよ!」


 二人は列車に張り付く形でしがみ付いた。


「流石にまだ電磁フィールドを付けてた訳やなさそうやな……」


 ロボット達が転がり落ちていく様を見ながらニーさんはそう呟いた列車の屋根を伝って先頭車両に進み出した。


『……良いね、次で最後だ、そのレバーを思いっきり上げて!』


 ハーミュラは言われた通りにレバーを一番上まで勢いよく上げた。


 その瞬間列車が汽笛を挙げて勢いよく地上に飛び出た。


「うわぁぁぁ!!」


 地上に飛び出ると既にそこはロボットやアンドロイドがひしめいていた。


『ハンドルを引き上げて!』


「うっ!?」


 ハーミュラは言われた通りにハンドルを手前に引き寄せると列車はスイと上を向く様に進み出した。


『外カメラ異常なし……レーダーに反応あり!ニード!』


「わーってら!トッチー!『バロー砲』や!」


「いい加減その名前変えへん!?」


 そんな軽口を聞きながらも、ハーミュラは後ろでまだ格闘を続けるアイニー達が気になりながら何度も振り返った。


『……仕方ないね、画面にルート表示をしておくからそれ通りに進んでね、ハンドルを右に切れば右に左に切れば左に、奥に押せば下を向くから、済まないが頼んだよ!』


「え?え!?」


 そうして急に画面に矢印が出て数字が表示された。


「大丈夫落ち着いて、あの矢印が前を向く様に進んでね、大丈夫、私が保証するよ」


 そう言ってドゥーは急に現れて、ギュッとハーミュラを横から抱きしめてアイニー達の方へと走り出した。


「伏せて!」


 アイニーは急に飛んできた光の光線がロボットを貫くのを見て驚いた。


「大きい怪我はないかい?」


 両手にガントレットを付けて手首の辺りに光輪を浮かせていた。


 そして自慢に伏せるアイニーに近づくと跪いて、


「済まないが列車内の敵を殲滅するから、ハーミュラ君を頼んだよ」


 そう言って立ち上がると、凄まじい速さと身のこなしで後方の列車へと飛ぶように走って行った。


 彼女が通った後は文字通り鉄屑の山が積み上がる事となった。


「ふぅ、こんなものかな……」


「いてて……全くジジイにもなって無茶はするもんじゃ無いな」


「そう言うくせに、生身で3体潰すのはどうかと思うな」


 そう言って皮肉を言い合っていると、空が割れたのかと思う様な音が聞こえた。


 二人は少しビクッとすると、呆れた様に笑い合った。


「アレ、ここまで音大きいのかい?」


「鼓膜潰れるぞ……」


 そして、その音を出した列車後方の四両分の面積を使う程の砲を操縦する兄弟が大声で怒鳴り合っていた。


「クッッッソ!こんなに音大きいもんなん!?」


「え!?なんえ!?」


「は!や!く!た!ま!こ!め!ろ!」


「あいよー!!!」


 トッチーは笑いながら自分の身の丈程ある弾丸をニードが受け取り、それを押し込んで発射した。


 ドォォォォン!


 と、鳴り響く音にニードは笑いながらトッチーは顔を顰めながら撃ち続けた。


「どうだーい!?」


 すると、そこにドゥーが軽い身のこなしでやって来た。


「あ!?あぁ!数が減っては来てるけど!このままやったらジリ貧よ!」


 するとドゥーは一瞬固まると、いきなり空中を指さした。


 それをカメラ越しに見て聞いていたハーミュラは首を傾げた。


「ハーくん!あっちに廃棄済の街がある!今遠隔操作で電磁フィールドを張ったからあそこじゃあどこにいるかわからないし、ロボットとかは入れない!」


 ハーミュラは目を細めて雲の隙間を見た。


「見えた!あそこだな!」


 すると、隣にアイニーがやって来た。


 見ると体に幾つかの擦り傷などがあったが、至って元気そうだった。


「あの先ね……私目がいいから誘導するわ」


 そう言うとアイニーは列車から顔を出した。


「ちょっと!?」


「もうちょっと右!」


 ハーミュラはもう仕方がないと諦めた様に首を振ると、アイニーの言う通りに操作した。


 ある程度地面との距離が近づいてくると急に飛行型のロボットが来なくなってしまった。


「やった!撒いた!」


 しかし、地面は急速に近づいて来ており機体を上げようとすると、スピーカーから声が聞こえた。


「このままで!スピードを落としてその角度のまま!」


 ハーミュラは口を何度かパクパクとさせたが、目を瞑って列車のスピードを落とした。


 ついに地面に墜落すると思ったが、唐突にスクラップの山から四角い口が出て来てそのまま列車を丸々飲み込んだ。


 暫く走ると列車は停車した。


「……ふぅ、完全にここは安全地帯だよ」


 後方からヨロヨロとドゥーが、胸に手をついて地面にへたり込んだ。


 そしてさらにその後ろからニーさんやトッチー、そして謎の老人が顔を覗かせた。


「……取り敢えず、一回休憩を兼ねて状況整理をしませんか?」


 そう言ってハーミュラが溜息混じりにそう言ったのにその場にいる全員は頷いた。

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