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ワールドタワー〜アイアンロード編〜  作者: ナイヤン
メイカー編
13/15

しばしの休息

 ハーヴェイクが目を覚ましたのを見てハーミュラは身構えると、慎重に檻に近づいた。



「あら、捕まっちゃったのね?」


「僕も育ての恩人に仇で返したくは無かったですよ」



 腰に手に付けているガントレットで牽制しながら、用意していた椅子に彼は座った。


 目線はフルフェイスのガードにより分からなかったが、雰囲気が警戒心の強さを滲ませていた。


 ハーヴェイクは少し悲しそうに檻の中に用意された椅子に座った。



「そう……じゃあ一つお願いを聞いてくれる?」


「何ですか?」



 ハーミュラは少し身を引くと、ハーヴェイクの出方を伺った。



「ペートがいるでしょう?少しあの子と二人だけでお話しさせてくれる?」


「……何が目的ですか?」


「大事な事よ……お願い」



 ハーヴェイクはハーミュラの手を握り目を見つめた。


 彼は動揺して手を振り解くと少し固まって腕を組んだ。



「……分かりました、呼んできますので少し待っていてください」


「ありがとう」



 その後ハーミュラはペートにその事を伝えると、彼女はヘラヘラと笑いながら行ってしまった。


 暫くするとハーヴェイクと共に出て来て、



「色々あって彼女にお手伝いしてもらう事になったっす」



 と、朗らかに言うのだった。


 ハーミュラは頭を抱えたが、これが本当だとするとこれから先がだいぶマシになるのは明白だった。


 やって彼等はハーヴェイクを仲間として迎えた。


 そうして少し話し合っていると、ニードから連絡が来た。



『どうで?落とせた?」


「初めまして、落とされちゃったわ」


『!?』


「ふふっ、久しぶりね、ニード・イーエヌド、そこにトッチーちゃんもいるのかしら?」


 驚くニードにハーミュラは説明すると、彼は何がおかしいのか大声で笑うと、ハーヴェイクが仲間に入った事に対して快く受領するのだった。



『さて、次の街だが……少し疲れたろ?一回じっくりと休みな、その間に俺達が他の街を回ってくるからよ』


「大丈夫です!僕達も……!」


「ダメよ〜?明らかに生体反応が疲労を示しているもの〜」


「だったらニードさんも……」


「そうねぇ、貴方達も休むわよねぇ?」



 先程の戦闘の時ですら聞かなかったその声色を聞いてハーミュラは少し震えた。



『……わーったよ、休むよ』


「いい子ね、メタン?ちゃんと見張っててね?」


『……了解した』



 画面の向こうにいるであろうメタンが少し疲労感を漂わせてそう言った。


 ハーヴェイクはやって来たショートに横向きに乗ると、



「それじゃあ私はこの街の防衛システムを見直すから、メタン?着いて来てくれるかしら?」


「勿論だとも」



 そう言って言ってしまった。


 仕方なくハーミュラとアイニーは即興で作った通信センターから出ると、自分達の家に戻る事にした。


 ハーミュラは家に戻ると、聞かされてはいたがやはり誰もいなくなって、物寂しくなった家の中を散らかった家具を片付けながら歩き回った。


 片付けている途中で家族との思い出が蘇るのか、時々目を拭う様な仕草をしていた。


 そして何を思いついたのか、片付けをそのままにして牧場の方へと歩いて行った。


 静かな牧場の中に入ると、そこには静かに眠らされている家畜達の姿があった。


 ハーミュラは一匹一匹、モフモフの毛皮を撫でて周り、一度牧場の中を見て回ったがやはり何度も目に涙を浮かべていた。


 消沈気味に牧場から出て、歩いているとニードさんの店の前までやって来ていた。


 落ち込んだ時はニードに愚痴を聞いてもらうなり、相談してもらうのが彼の日常だったのだ。


 すると、気配を感じて振り返ると、アイニーが彼に向かって突進して来た。


 彼はアイニーを抱き止めると、抗議の言葉を出そうとしたのか口を開いたが、彼女の顔が思っていたよりも明るい事に驚いた。


 しかし、その笑顔はハーミュラにとってみれば今までの笑顔とは異なり、空元気である事がわかった。


 彼はそんな彼女に優しく笑い掛けると、手を引いて走り出した。


 彼女の手を引いて向かった先は街を一望できるレストランだった。


 普段はその立地の良さゆえに一般の客が入る事は出来ないが、今は彼等を止めるものは誰もいなかった。


 街の窓が太陽の光を反射してキラキラと煌めき、街をデコレーションしていた。


 日が傾いて来て街に夜が訪れた。


 本来であれば街に光が灯り、先程とは違う美しい夜景を見る事が出来ただろうが、街の光は街灯以外消え去り、街全体を黒色に染め上げていた。



「……ねぇ」


「ん?」



 唐突にアイニーがハーミュラに話しかけた。


 彼女の目線は街では無く空を見つめていた。



「星が……綺麗だよ」



 彼女の言う通りに空を見上げると、そこには言葉を失う程の星が輝いていた。


 恐らく今までは街の光が邪魔して見えなかったのだろうが、今はこうして光が消えている中は見えるのだろう。


 我々が天の川と呼ぶその星々の光は彼等にどう映ったのか、二人は言葉を失ったまま動かずにいた。


 どれほどの時間が経ったのか、アイニーがまたふと話した。



「あの宇宙の何処かにお父さん達が……」



 遠くの宇宙に浮かぶ『タワー』と呼ばれる存在、ハーミュラはハッとして空に目を凝らすが、勿論見えるはずもなく諦めた様に俯いた。



「……ねぇ、ハーミュラ?」


「何だい?」


「……私の事好き?」



 彼女は唐突に彼に爆弾を投げつけると、ハーミュラはあまりの驚きに彼女を二度見した。


 しかし、驚いた様な表情はすれどすぐに彼は落ち着いた様に笑った。



「もちろん」


「そっか……良かった」


 

 彼等は見つめ合い、ハーミュラは星空をバックに顔を徐々に近づけて行った。


 唇が触れる直前、無線機が鳴った。


 二人は驚いて距離を離すと、ハーミュラが少し残念そうに無線を取った。


 無線の先はウェイトだった。


 メッセージの内容は、ニードが店に少し欲しい物資があるからハーヴェイクに届けさせて欲しいとの事だった。


 二人は顔を見合わせて苦笑すると、ハーミュラが一気に顔を近づけた。


 アイニーは一瞬の抵抗があったが、直ぐに二人の距離をゼロにした。

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