激動の始まり
前書きに長々とあると私は鬱陶しく感じるので書きたい事は後書きで書きます。
少年は今日も機械で出来ている街、ハーヴェイクの中を穏やかな気持ちで歩いていた。
「おはよう!ハーくん!」
「おはよう!」
街ゆく人達は皆笑顔で彼に挨拶をし、彼はそれに笑顔で答えた。
そうして歩いていると、彼は店の前で立ち止まり店主に声を掛けた。
「おはようございまーす!ニーさーん!?」
「や、ハーっちやないけ、おはようさん」
黒い髪の年若い店主は訛りのきいた話し方で金髪の少年に紙袋を二つ手渡した。
「ほれ、いつもの奴と、頼まれてた奴」
「ありがとう!本当に出来たんだ!ニーさんが来てくれたらもっと捗るんだけどなぁ」
「バカタレ、俺はここでしたいこと見つけれてんからコレでええねん」
少年は残念そうに笑うと踵を返した。
「それじゃあ行って来まーす!」
「ほいほい、きぃつけてなー!」
少年は店の中に置いてある機械にポケットからカードを出すと、それをかざしてお金を払うと足取り軽く店から出て行った。
彼がその次に足を止めたのは大きな門の前だった。
「おはよう!アイニー!」
「あ、おはよう、ハーく……ハーミュラ」
ハーミューラと呼ばれた彼はアイニーと呼んだ赤髪の彼女に向かって、先程店主から貰った紙袋の中身を見せた。
「ほら見てよ先週ニーさんに頼んでた『金属を切れる火を出せる小さいやつ』何だけど……ここを押すと……」
バーナーのような見た目のそれは見た目通りに先から火を出した。
「危ないから仕舞っときなさい」
「うっ……はーい」
肩に手を置かれて体を大きく振るわせたハーミュラは後ろを振り返り『保護者』を見た。
人造人間である彼等は外に出た際に危機から彼等を守る存在である。
そして、ハーミュラらの仕事は外に出て新たなテクノロジーの発掘、発見、資源の回収となっている。
「それじゃあ出ましょう」
『保護者』がそう言うと同時にエネルギーシールドで守られている門が開き、車やトラックが先行してハーミュラ等は最後にそれぞれ自分のバイクに跨り、草原広がる大地へと出て行くのだった。
バイク群の最後尾にいるハーミュラはバイクを自動運転にして、バイクに取り付けてあるパッドを操作して新しく発明品が出てないかをチェックし始めた。
首を傾げながらも時にはクスリと笑って発明品を見ていると、アイニーからメッセージが飛んで来た。
『自動運転は危ないって言ってるでしょう?』
仕方なさそうに笑うと返信をした。
『分かってるよ、少しだけだからさ(^_^)』
『そう言って何回目?怒るよ?』
溜息をついてパッドを消して自動運転から手動操縦に戻そうとした瞬間、バイクが急にハンドルを切った。
慌ててハンドルを握ってバランスを取り戻すと、隣に『保護者』が来た。
「あのまま自動運転にしていたら、事故を起こしていたので急遽ハンドルを操作させて戴きました」
ドキドキしながらもハーミュラは『保護者』に礼を言うと、何にぶつかりそうになったのかを振り返った。
それは球体だった。
人が一人入れそうな程の……。
ハーミュラは気がつくとバイクの集団から遠く離れた場所で止まっているのに気が付いた。
暫く考えるとアイニーにメッセージを打って球体へとバイクを走らせた。
パッドがうるさく何度も呼び出しを続けるが、抑えきれない興奮と緊張感を持って彼は球体へと歩み寄り、調べ出した。
軽く調べた所落ちて来たのはつい最近で、本当に中に人が乗っていた形跡があった。
完全に興奮に頭を支配されたハーミュラだったが、かえって彼の頭を冴えさせた。
よく見ると球体から何かを引きずったような痕があり、それを追って近くのコロニーの破片でもあるスクラップ置き場に足を踏み入れた。
息を潜めて耳を澄ませると奥の方から苦しそうな呻き声が聞こえた。
慎重に足音を立てずにその声の方に近づくと、そこには半身が吹っ飛んでいる青い血を流す人造人間がいた。
思わず悲鳴を上げたハーミュラにその人造人間は気が付き、睨んだがそれ以上何もすることはなかった。
少しの間気まずい空気が流れてハーミュラは逃げようと立ち上がったが、人造人間が口を開いた。
「7.1:4.4……」
何を言っているのか理解できなかったが、自分を引き止めていることが分かったハーミュラは、同時に何故かこの人造人間が敵意を持っていない事に気が付いた。
「な、何?」
「2:5.9:4.0:2……」
そう言って人造人間が何かを握った手を差し出した。
吸い寄せられるようにハーミュラも手を差し出すと、人造人間は何か長方形の小さな箱か何かを手渡した。
そうしてボソボソと何かを言った後に動かなくなってしまった。
ハーミュラは後退りをしながら、今度こそ逃げる様にその場を離れた。
その後の資源回収作業にら全く身が入らずに、『保護者』に相談してその場所に再び行ってみると、半身吹っ飛ばされた人造人間所か何かの球体の痕跡すらも全て消え去っていた。
しかし彼の手の中には依然として謎の小さな立方体が残されていた。
それを静かにポケットに入れてその日は家に帰った。
翌日、その日は休日だったのでニーさんに立方体を見せようと家を出たが、家の前にはアイニーが立っていた。
「ハーミュラァ……?」
明らかに怒っている様子の彼女に彼はアタフタしながらもにこやかに、
「な、何かな?」
と、聞くのであった。
「何かなじゃ無いよ!どれだけ私昨日心配したと思ってるの!?」
「ご、ごめん……」
どうどうと手で静止しながらもハーミュラは一歩後ずさった。
暫くの間腕を組んでじっと彼を見つめたが、仕方の無さそうに溜息をつくと彼の腕を引っ張った。
「な、何を……」
「今日は私も一緒に行く事にするよ、どうせまた何かやらかすだろうし」
「そ、そんなに……」
「そんなに、だよ」
アイニーはそう言って彼の腕を引っ張って走り出した。
二人はそうしてニーさんの店まで走って来た。
ゼエゼエと息を切らせるハーミュラを他所に、息すら上がっていないアイニーはニーさんに話しかけた。
「ごめんなさい急に」
「あー、ええよええよ……ジュース飲む?」
ニーさんはハーミュラをチラリを見ると気の毒そうに笑うと店の奥に入って行った。
「ちゃんと鍛えておかないからそうなるんでしょ?」
「き、君の家は遺伝子強化受けてるだろうけど僕の家は受けてないんだよ……」
「それはそうだけど……」
「ほい、おまちどうさん」
店主は二人の前にシュワシュワとした液体を前に置くと、二人はチビチビとそれを飲み始めた。
そんな二人の隣に店主は椅子を持って来てどかっと座った。
「んで?どったん?」
「聞いてよニーさん……」
と、先日の話をした所店主は豪快に笑った。
「はっはっはっはっは!オバケでも見たんや無いけ?」
「「オバケ……?」」
店主はそうだそうだと言うと、二人に旅の途中でそう言う事を言う街があった事を話した。
ハーミュラはその話を気持ち半分で聞き、ふと外を見てみると街の人達が空を見上げていた。
気になり彼も外を見上げてみると、昼だというのに空に星が輝いていた。
それも赤色に。
店主も何か起こっていると気が付き外へと出て行き、通行人と何か話を始めた。
「ねぇ、何かあったの?」
「あ、うん、空に赤い星が……」
と、続きを言おうとした所で店前で明らかに異常な音が聞こえた。
そして、次の瞬間アイニーが苦しそうに、そしてあり得ない関節の動きをし始めた。
「あ、アイニー!」
椅子を吹き飛ばしてモゾモゾとし始めたアイニーを心配してハーミュラは近寄ったが、普段のアイニーからは信じられない力で吹き飛ばされた。
どうしようかと考えている内に急に店前のシャッターが閉まった。
「えっ!?」
振り返るとそこには焦燥した様子の店主が座り込んでいた。
「な、何があったんですか!?」
「ま、町のアンドロイドとロ、ロボット達が……!」
次の瞬間店主に向かってハーミュラの隣からアイニーが飛びかかり、店主からシャッターを操作するリモコンを奪おうと乗りかかった。
「クソ!」
店主が抵抗し、ハーミュラも引き離そうとしたがその努力も虚しくリモコンを奪われてしまった。
そして、アイニーはリモコンを操作しようとしたが、ガン!と音がして倒れてしまった。
「……無事け?ニーにぃ?」
「トッチー……サンクスやよ」
ヨロヨロと立ち上がり金属棒を片手に険しい目つきをしているトッチーと呼ばれた店主の弟はワイヤーでアイニーを縛り上げた。
「安心し、気絶しとるだけやし」
ハーミュラはアイニーの口と鼻の前に手をかざすと確かに息をしている感覚が伝わって来た。
「やばいなぁ……逃げるしか無いか?」
「ま、待って!父さんと母さん、それに妹が!」
トッチーはリモコンを操作してシャッターをこちら側から一方的に見えるモードにした。
そこでは遺伝子改良された人間やアンドロイド、ロボットが改良されていない人間や動物達を襲い、縛り上げて運んでいる姿が目に入った。
「上から見とったけど、この街は改良受けてる人等の方が多いし何より、飼料受けてへん人等が普通に勝つのは無理や」
と、トッチーはそう言ってハーミュラを2回に通した。
ハーミュラに望遠鏡を手渡して、自宅の方を見る様に言った。
遠くに見えるマンションが大量のロボットやアンドロイドに襲われているのが見えた。
そして、不幸にも……。
「あぁっ!父さん!母さん!」
「そろそろこのシャッターもヤバいかもやで!」
そんな彼の絶望を他所に、彼等に更に別の絶望が迫って来ていた。
「よし、今日はじいさんいる日け!?」
「時間的にちょい怪しいで!」
「ど、何処に!?」
「「ええからついて来い!」」
そう言って、二人はハーミュラの手を引いてキッチンの隠し地下通路を開けると中に入って行った。
地下通路は薄暗く壁に小さな豆電球がぶら下げてあるだけだった。
「急ぐで、店中の隠してある発電機が壊されたらここも真っ暗やぞ!」
ニーさんは暴れるアイニーを担いで、通路の幅ちょうどぐらいの大きさの四角い箱に乗り込んだ。
「早よ乗れ!」
後方ではバーナーで入口を溶接しながら困惑するハーミュラに怒鳴りつけた。
ハーミュラはニーさんの手を借りて箱に乗り込むと同時にトッチーが入り口の溶接を終えた。
「出せ出せ出せ出せ!!」
トッチーが箱に手を乗せた瞬間ニーさんが箱につけてあったボタンを押した。
その瞬間箱が浮かび上がって物凄い勢いで発進した。
「どっせい!」
ニーさんは縁にしがみつくトッチーを中に入れて尻餅をついた。
「ふぅ……あと5分後に到着や」
「に、ニーさん……何でこんな……」
トッチーとニーさんは顔を見合わせて肩をすくめた。
「実はな……俺が旅をやめてあそこに住む様になったんは、あるヤベー奴を見つけたからやねんな」
そうしてニーさんは話し始めた。
「俺等は元々定住地を持たへん『回収者』やってんけど、1年前やな、ある山の中を掘ってたらでっかい『スクラップ』にぶち当たってな」
「それをほじくり返してみたら、何か格納されとったんよ……んで、それを暫くいじくりまわしとったら、俺等の掘った後を辿って爺さんが来たんやな」
「んで、爺さんが『どうかこれを調べさせてくれ』って頼むもんやから、どうしよかて考えた所、どうにもこのデカブツをいじくり回すにはツールが必要だって話になって」
「金を稼ぐ必要が出来てな、そこで爺さんにこの街で顔が効く様やったから、一緒に調べるの許可する代わりに住居を融通してもろたわけよ」
と、トッチーとニーさんが交互に話していると、箱が減速して金属の丸い扉の前で止まった。
「着いたな、トッチー、これ壊しとけよ」
「分かっとるわ」
扉の前に立つと勝手に扉が開き、大きな空間に出た。
「ウェイトさーん!?」
そう叫んで老人を探すニーさんを他所にハーミュラは目の前に出て来た大きな物体に息を呑んだ。
「何なんだこれは……」
それは見るからに兵器としての運用を想定された2車両横に並んだ列車だった。
どうも、初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
また頭の中にどうしようも無いほどアウトプットしたい作品が出来たので書いてまいりました。
宜しければどうかご覧下さいませ。