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キーパーソン?

 日向の両親は、彼が十歳の時に亡くなった。当日は、事故で死んだと聞かされていたが、二人は自殺したのだと高校生になって親戚から告げられた。

 何故、二人が死を選んだのか、誰も知らない。仲がよく、仕事も順調だったはず。何より、日向自身、そう聞かされても納得できなかった。

 自分を置いて、両親はあの世へ逝ってしまった。


 怨んでないと言ったら、嘘だ。



 今の日向は、高校生活よりも、卒業したら一人暮らしをする資金集めの為、バイト三昧。だから、クラスに友達もいなければ、全員の名前すら分からない状態だ。

「日向ぃ!屋上にいたんか!」

 ただし、こいつは別だ。

 赤毛の長髪に、口元にピアス。嫌でも視界に入ってきて、どこからともなく噂が聞こえる。


 比上はヤバイ。


 ただでさえ気弱な日向にとって比上キヨリは、最も近づきたくない存在だった。

「昨日は…その…助けてくれてありがとう」

「ちゃんと眠れたか?」

 ピアスが刺さった痛々しい口元が笑う。

「いや、全然」

「だろうな」さらに笑う。

 比上は、ゆっくりと日向の隣に座る。屋上で、彼女と二人きりでいるなんて、昨夜の光景同様、何だか奇妙だった。

「現実だったんだよね?」

 恐る恐る尋ねる日向の目に、頷く比上が映った。

 なぁんて!本当は全部ドッキリでしたぁ!とは、言ってくれなさそうな、真剣な目つきだった。

「お前はキーパーソンだから、いつか話そうと思ってた」

「キーパーソン?」

 比上が、日向が首元を指差す。

「これ?」

 それは、死んだ父親がいつも身につけていた錆びた鍵だった。身体は無残な姿になってしまったが、この鍵だけは曲がることなく残ったらしい。

「1999年7の月

空から恐怖の大王が舞い降りてアンゴルモアの大王を甦らせる。知ってるか?」

「あぁ、ノストラダムスだろ?」

「そう。16世紀、フランスに生まれた預言者ミシェル・ノストラダムスは、世界が終わると予言した。でも、その予言は外れたとされ、世界はこうして平和に保たれている」

 中学生の時、女子たちがうるさく騒いでいたことを思い出した。

「この予言は、外れちゃいない。1999年7の月、あの世とこの世を繋ぐ扉が、大魔王の力によって破壊された。そのせいで、魔物と化した死者がこの世に舞い降りた」

 春なのに、やけに冷たい風が吹いた。

「魔物は、生者の血肉を喰らい生者に成り済まし、この世に侵入して大魔神の元、侵略を企んでいる」

 想像力豊かな奴だなと思う反面、昨日の光景が蘇る。

 サラリーマンの身体から笑いながら現れた物体は、確実にこの世には存在しない生き物だ。

「世界の終焉。それを阻止するために、破壊された扉を見つけ、鍵をかけるのがキーパーソンの使命なわけ」

 比上も、首から下げた銀色の細い鍵を見せた。

「お前ら、授業始まるぞっ」

 うるさい生活指導の中川が現れなかったら、この子どもじみた話を信じるところだった。

「今行きます」

 日向は慌てて立ち上がったが、比上は彼の腕を掴んだ。

「な、何だよ」

 不覚にも、心臓が高鳴った。

「行くな」

 比上は続けて言う。


「死ぬぞ」 

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