2
アラームが鳴ってる。と意識した瞬間に跳ね起きた。
外が明るい!やべぇ、遅刻する!
身体を起こすと何かにぶつかった。同時に叫び声。
「うわぁ!」
「ハインリヒ様!」
なんだ!誰だ!空き巣か⁉︎不審者⁉︎取られるようなもんはなんもねぇぞ!むしろくれ!
「誰だよ!ここ俺んちだぞ!」
咄嗟に身構えた先にいたのは…外国人風の女性と男の子だった。相手が成人男性ではなかったからか、少し落ち着く。
俺もギリギリの生活してるけど、親子で空き巣かぁ…世知辛い世の中だ。不景気が憎い。
その割にはペラペラのファストファッションには見えない、きちんとした服を着ている。
なんだか発表会みたいな…なんというか、ちゃんとした服。
そんな事を考えてて気づいた。手をついた先は布団ではなく…柔らかい芝生だ。
「随分と解放的なお宅にお住まいのようで?」
馬鹿にしたような声で子どもの方が言う。随分と偉そうだ。
「ですが、残念ながらここは我が家の領地ですので…誰だよはこちらのセリフです」
「りょうち…領地?それを言うなら土地だろ?」
「我が家が管理してる土地なので領地ですが、あなた頭は大丈夫ですか?」
なんだこのチビ…意味がわからない。
再び鳴り出したアラームを止める。
スヌーズ設定を解除する。
「あぁ、それですね…聞いたことがない音が聞こえると報告があったのです。見回っていたら貴方が倒れていたので、近づいたら急に起き上がられて…どこか不調はございませんか?」
凛とした佇まいの女性は俺を気遣いつつも、見定めるような目で見つめてくる。チビの方といい日本語上手だな…日本に住んで長いんだろうか。
「大丈夫です、そういえば昨日は外出先で具合が悪くなった気がします。酔ってはいなかったんですが…ここはどこでしょう?」
「おや、きちんとした言葉遣いもできるのですね」
うっさいぞチビ、お前は黙ってろ。
「ここはグリューベルです。こちらの方は」
そう言ってチビを振り返る。
「ハインリヒ・アデル・グラーフ・フォン・ヴァイツェン」
「私はドゥーダと申します」
「は…?なに…どこだって…?」
カタカナっぽい地名…北海道か沖縄かな?いや都民よ俺。
とりあえずチビ、名前なげぇな…