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初投稿です、よろしくお願いします。

 どうしてこんな人生になっているんだろう。


古本屋の片隅、無心に並んでる漫画を裏返してはバーコードをリーダーで読み取る。

もうすぐ22時、閉店間際の店内に客は疎らだ。

スマホに映った数字を見て内心、舌打ちする。


 これじゃ儲けはほぼ見込めない…なんだよ、仕事が終わって真っ直ぐに帰れば良かった。

でも一人暮らしのあの家に早く帰ったって、やることなんてスマホゲームくらいしかない。少しでも今月の稼ぎを増やさなければと、疲れ果てた身体を引きずり店に立ち寄った。


 疲れた。心も身体も。

高校を卒業して実家から逃げるように入社した会社は超絶ブラックで、安月給はなんとか我慢できたが上司の怒鳴り声に心はもう耐えられないところまできている。


 常に鞄の中に入れてある退職届を何度も手に取っては、提出する決心もつかずまた鞄に戻す日々。

 転職したくても生活するだけで金は消える。

不景気、高卒、すぐに次が決まるとも思えない。実家は頼れない。副業?時間も気力もない。


 身動きが取れないなりに考えた末に、たどり着いたのは転売だった。実家にいた頃は見下してた行為。発売日当日に大量にフリマサイトに並ぶ定価より高額な商品に、出品者も購入者もふざけるなと(いきどお)ってた。


 そんな人間とは違う、あくまで俺は古くて手に入りにくい商品を良心的な値段で取引するんだと正当化しても、現状は元手がなくて古本くらいしか買えないだけだ。

チラチラと店員が俺を見る、顔を(しか)められる。最初は心が削れた、でももうこうするしかない。仕方がない。



 棚の端から読み取んで真ん中まで来た時に、その本はあった。

「え…これ…」

スマホに映る数字を見て手が止まる。なんだこの本、定価がない。

登録されてない?そんなバカな。絶版した本か?

参考価格、ゼロが…何個だ!?なんだこれ、やべぇ!


 裏返して表紙を見る。真っ白なハードカバー。

端の方は擦り切れてて状態はあまり良くないけど、これ売ったら俺の人生やり直せるんじゃ…!


 そう思った時、手のひらに強い力を感じ。

ひとりでに開いてパラパラとめくれるページ。

混乱しつつも高額なその本を投げ出さずに咄嗟に支えて、俺の意識はブラックアウトした。

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