6話
『次は体が欲しいね』
体がないと身動きが出来ないし、周りの状況を確かめることもできないからな。
まぁ、名前が決まったんだから次は体だろう。
そういえば、ハルカじゃなくてアルフェはどんな姿なんだろうな。
『アルフェって日本人?』
『そう。コウキもでしょ?』
感覚的なことが似てるから、そうだと思うけど。
『まぁな』
よかった。
同じ日本人だからかな、安心できる。
『そういえば、体が欲しいけど元の体は無理なのかな?』
元の体でいいなら、ここで魂だけという事はないだろう。
魂だよな?
まさか意識だけとか?
……考えるのは止めよう。
どんなに考えても答えなんて出ない。
『無理だから、今の俺たちの状態だと思う』
『そうだよね。そういえば、魔王って美しい存在だよね?』
『なんだそれ?』
美しい存在?
どこ情報だ?
『えっ? 違うの? 私が読んだ小説では魔族や魔王は美しいほど力があるって』
『だったら俺たちは最初は醜いって事か? 力なんてないだろうしな』
あっ、そうか。
「強くなれ」と、言われたのだから今は弱いのか。
って事は、醜いの?
『体を手に入れたらいきなり無双とかないかな?』
無双?
圧倒的な力だったよな。
『それは無いんじゃないか? 今までのガチャを見る限り』
まぁ、そうだよね。
そんな設定に、してくれているわけないよね。
『だよね』
今までの事を考えると、まともな体が貰えるのか不安になってきたな。
大丈夫だよね。
さすがに。
『とりあえず、また当分は「待て」だな』
これが長いんだよな。
『そうだね、いつ頃HPは溜まるかな?』
『『…………暇だ』』
暇つぶしもここには無いもんね。
あったとしても見えていないだけかもしれないけど。
こういう時の一番の暇つぶしは、なんだろうな。
『『……………』』
『『………………』』
『『……………………………』』
暇だ。
『コウキ?』
『………………』
あれ?
返事がないな。
もしかして寝てるの?
私に気を使って寝てなかったものね。
寝なくても大丈夫とは言っていたけど、悪い事をしたな。
それにしてもどうして私は寝られないんだろう?
『体があったら、コウキにいたずら出来るのにな』
することがないって、苦痛だったんだな~。
あとどれくらい待ったらいいのかな。
『……………………………』
『……………………………』
『……………………………』
『……………………………』
「……が溜まりました。国を造りましょう」
ん~、なんだろう。
ぼーっとする。
寝られない事がこんなに苦痛だったなんて。
「……が溜まりました。国を造りましょう」
国?
国って何が。
あ~コウキはまだ寝てるのかな?
めんどくさいな~。
「……が溜まりました。国を造りましょう」
さっきからずっとこれの繰り返し。
ちょっと待ってよね。
今、やる気が起きないんだって。
「……が溜まりました。許容量を超えます。爆発します」
爆発ね。
そうか…………爆発!
『なに? えっどいういう事? コウキ! コウキ、起きて!』
今、爆発って聞こえた。
何が爆発するの?
『あれ? ボタン? いつの間に』
「……が溜まりました。許容量を超えます。爆発します」
爆発ってボタンが?
『コウキ! コウキ!』
『ん~、ハルカ? どうした?』
久々に寝たな。
どれくらい寝ていたのかわからないが、ハルカが随分焦っているのはわかる。
何かあったのか?
「……が溜まりました。許容量を超えます。爆発します」
『許容量? 爆発?』
『起きた! よかった。早くボタン押さないと爆発するって!』
はっ?
爆発?
ってボタンってどれだ?
あれか。
『ハルカ、そのボタンは見えているのか?』
『見えてるよ』
『これで何が決まるんだ?』
『えっと……国! 国を造りましょうって』
国?
魔王の国?
「……が溜まりました。許容量を超えます。爆発します。残り30秒」
『げっ! とりあえず、俺が押せばいいのか?』
『たぶん?』
あぁ、仕方ない。
とりあえず、爆発は駄目だろう。
ボタンに手を伸ばす。
煙がスーッと白いボタンに伸び、ボタンがぐっと押されたのが見えた。
ガチャガチャガチャ……ポン、ギギギギ……ポン。
『ハルカの分も出たんじゃないか、これ』
魔王1人に国は1つのはず。
なのに目の前には2個のカプセル。
『私もそう思う。ところでコウキ』
『なんだ?』
『私としては慣れているから問題ないけど、呼び方がもとに戻ってるよ』
呼び方?
あっ、ハルカ呼びになってた。
『悪い。アルフェ』
やっぱりそっちになるのか。
私としては、ハルカのほうがありがたいんだけどな。
仕方ないよね。
早くなれないと駄目だし。
『うん』
『カプセルを開けるか』
『そうだね。そうしないと次へ行けないみたいだし』
目の前には2個のカプセル。
その下に、「開けますか? 廃棄しますか?」と2種類のボタンがある。
廃棄したらどうなるのか気になるけど、怖くて選べるわけがないよね。
『カプセルが2個だから、一緒にボタンを押した方がいいのか?』
『さぁ? とりあえず一緒にやっておく?』
意味があるのかどうかわからないけど。
もしもの事を考えるなら、そうした方がいいのかな?
はぁ、簡単でもいい説明書か攻略本が欲しい。
『そうだな』
2つの煙がふわりと「開けますか?」という文字が書かれたボタンに近付く。
そしてボタンがぐっと下に縮んだように見えると、カプセルが開いた。
『やべっ、緊張してきた』
何が出るんだ?
国ってどいういう感じで出るのかもわからないけど、とりあえずあいつらが作ったルールの国だ。
何が出ても落ち着いて対処しないとな。
ハ……アルフェは大丈夫か?
「おめでとう! 漆黒の国を手に入れたよ!」
漆黒の国?
暗い国なのか?
で、それは俺たちのどっちに言ったんだ?
「……おめでとう! 暗黒の国を手に入れたよ!」
もう1つは暗黒の国?
えっと、漆黒の国に暗黒の国は何が違うのだろう?
それに、どっちがどっちの国を管理すればいいのだろう?
『コウキ、2つの国の違いは?』
『さぁ、とりあえず国は手に入ったみたいだな』
『そうだね、相変わらず見えないけどね』
そうなんだよな。
国を手に入れたらしいのに、俺たちは何も変わらない。
目が欲しい。
そうすれば、見えるのに。
『というか、体じゃなかったな』
『うん。それに、HPが許容量を超えると爆発するって』
それもあったな。
『気が休まらない』
『大丈夫だよ。今度からはすぐに動くようにするから』
ハルカの疲れたような声。
『俺寝てたんだな。悪い』
いつの間に寝てしまったんだろう?
俺には必要ないと感じたんだがな。
『暇だから仕方ないよ。それに気にしなくていいよ』
『アルフェはやっぱり寝られないのか?』
『うん。完全に無理みたい』
『そうか』
隣で寝てたら鬱陶しくないか?
大丈夫か?
『次こそは体が欲しいね』
『そうだな』
本当にマジでお願いする。
体をくれ!
『ねぇ、漆黒ってどんな世界になるのかな?』
漆黒ね。
俺の中のイメージだと。
『光の届かない純粋な黒い世界』
『光がないのかな? それはちょっと寂しいね』
『そうだな。光は欲しいな』
光の届かない闇の世界か。
イメージは何となくできるけど。
『じゃぁ、暗黒は?』
暗黒のイメージか。
漆黒より闇というか犯罪の印象が強いな。
『暗黒街を思い出すなら、犯罪の蔓延る世界だな』
『私もそのイメージが強いかな』
実際には暗黒街なんて知らない。
でも……確かに犯罪が蔓延る世界というイメージだな。
『それが国? 国として終わってない?』
『俺たち魔王だからだろ』
『そうだけどさ。なんだか仲間が出来ても裏切られそう』
仲間か。
魔王には確かに手下が必要だよな。
暗黒の国だと裏切りとか普通に起きそうな印象だな。
『仲間や部下が出来ても、気を付けないとな』
『うん』