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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
魔王Lv?2
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39/58

39話

ドーーーーン


「えっ? 何? 今の音」


「分からないけど、なんだか嫌な感じだな」


アルフェは、卵から体を離して扉に視線を向けると、体が震えている事に気付く。

不思議に思い羽を見つめる。

やはりフルフルと震えている。


「ラルグ、なんだろう怖い。震えが止まらない」


アルフェの言葉に視線を向けると、羽を小さく折りたたんだアルフェが震えていた。

そっと近づき、アルフェの体を蛇の体で包み込む。


ドドドーーーーン


先ほどより大きな音が部屋に響き渡ると、部屋の中にいるのに風を感じた。


「何これ」


風が通り過ぎると、アルフェの体の震えがガタガタと悪化する。

包み込む力を強くするが、俺自身も震えてしまっていた。


「風に魔力を感じるな。それもかなり巨大な魔力だ」


「うん。何かやばいね」


体の芯が震えあがるような魔力を感じて、体の震えが止まらない。

ラルグが包み込んでくれたが、不安や恐怖が収まる気配はなく泣きそうになる。

気持ちを落ち着かせていると、近くでピシッという音が聞こえ視線を向ける。

視線の先には、ヒビの入った卵。


「ヒビが……」


今、産まれたら苦しむだけだ。

産まれないほうがきっといい。


「駄目! 今は産まれちゃ駄目!」


包み込んだアルフェが、卵に向かって叫ぶ。

卵を見ると、少しずつヒビが広がっているのが見えた。


「ラルグ、行こう」


アルフェを見ると、扉をじっと見つめている。


「死ぬだろうな」


「そうだね。魔力もほとんどないし、それに……」


姿も見えていないのに感じる魔力。

格の違いをひしひしと感じる。


「私たちを作った奴が、存在に気付いたのかな?」


アルフェの言葉に、頷く。

おそらくそうだろう。

何故なら今そこにいるだろう敵は、これまでとは全く違う。

完全に俺たちを殺すつもりなのだと感じる


離れていくラルグの体温が寂しく感じる。

きっとこれが最後になるだろう。

外にいるだろう敵は、私たちではけして倒せない存在だとわかっているから。


「行こう」


「うん」


ラルグが出ていった扉を出ると、卵たちを見る。

産まれて欲しかったな。


「守ってあげられなくてごめんね」


廊下を外に向かって移動していると、感じる殺気。

玄関に立ち、アルフェとじっと扉を見つめる。


「勝手に作ったんだから、ほっといてくれたらよかったのにね」


アルフェの言葉に苦笑が浮かぶ。

俺もそれは感じていた。


「そうだな。忘れてくれていたらよかったのにな」


何度深呼吸して落ち着こうとしても、体の震えは止まらない。

逃げ出したい。

でもきっと、逃げ場所なんてない。

だったら隠れて震えているより、最後まで戦う。

前の私だったらきっと隠れていたと思う。

なのになぜか今は、戦う事に疑問を感じていない。

魔王としてのプライドでもあったのかな?

今更なのに。


「あっ」


見つめていた扉がすっと勝手に開いた。

それに驚いていると、肌を刺すような魔力が全身を襲う。


「行こう」


飛んで行くアルフェを追うように、移動する。

魔力がほぼない状態で、どれだけ戦えるのか。

きっと、一瞬で勝負はつくんだろうな。


ここにきて、本気で逃げ出したくなるなんて……。

それを誤魔化すように、少し大きな声を出して玄関から飛び出す。

レベルの違いすぎる魔力を全身で受けて、笑みがこぼれる。

魔力も戻っていない状態でいったい何が出来るのだろう?

きっと、すぐに勝負が付くんだろうな。


「あっ」


長い通路を抜けると、見た事があるシルエット。


「はははっ、ドラゴンかよ。小さいサイズみたいだけど、勝てっこないだろう」


1匹の小さなドラゴンが、興奮した様子で目の前にいた。

それを見てラルグと笑ってしまう。

こんな貧弱な魔王にドラゴンなんて大げさだ。


「来るぞ!」


ラルグの叫び声に、慌てて羽を動かす。

大きく口を上げたドラゴンが、私に向かって攻撃を仕掛けてくるのが分かった。

ゴーーー。

何とか羽を動かすが、魔力が足りていないため速度があがらない。


「くそっ」


大きな火の塊が飛んでくるのが見えたが、完全に避けられないと覚悟する。


「がはっ」


全身に強烈な痛みが走る。

飛んでいた体が力を失い、急降下していくのを感じるが止めるだけの体力がない。

何とか羽を動かそうとして、感じた事のない痛みが走り意識が飛ぶ。

が、地面に叩きつけられた衝撃で意識が戻る。


逃げた先にドラゴンの尻尾が振り落とされる。

何とか避ける事が出来たが、尻尾が起こした風に体が飛ばされた。

アルフェを探すと、地面に落ちていく姿が見えた。

どうにかしたいと思っても、体が動かない。

空に近かった魔力がまた無くなったのか、体が重く感じる。

ドラゴンを見ると、こちらに向かって口を開けているのが見えた。

アルフェを襲った火の塊を覚悟して、重い体を引きずって移動する。

ゴーーー。

真後ろで大きな音が聞こえ、尻尾に痛みが走った。

痛みに耐えて移動するが、ぱたりと倒れてしまう。

視線で尻尾を確認すると、尻尾が無くなっているのが分かった。

そして、体の一部が炭となっているのも見えた。


ドーーーーン。

振動と共にドラゴンが近付いて来るのが分かった。

体を何とか起き上がらせて周りを見る。

少し離れたところに、右の羽を失ったアルフェがいた。

アルフェも俺に気付いたのか、残った羽をパタパタと動かした。


視線の先には体の半分を失ったラルグ。

私も似たようなモノだろうなと、少し苦笑してしまう。

悔しいな。

勝手に魔王にされて、勝手に間違われて、勝手に殺される。

本当にいい事がない。

ドーーーーン。

近くで地面が揺れる。

そっと視線を向けると、大きな口を開けたドラゴン。

サイズ的には大きくはない。

でも、私たちよりはるかに強い存在。


「終わりか~。あっけないな」


消滅しちゃうのかな?

何も残らない。

ドラゴンの口の中に炎が見えた。

こんな時なのに、なんだか綺麗な炎。

赤というより白に近い炎が迫ってきているのが分かる。

目を閉じる。


「うっ、がっ」


何?

体中が焼ける。

ドラゴンの炎なのかと思ったが、違う。

外からじゃない、中から膨大な何かが流れこんで意識が混濁する。

熱い! 痛い! 熱い! 痛い!

体がおかしい。


なんだ?

アルフェが目をつぶるのが見えたと思った次の瞬間、襲ってきた痛み。

違う、痛みだけじゃない。

熱い!

ドラゴンの炎なのかと、痛みを堪えて目を開けてドラゴンへと視線を向ける。

その間も、ものすごい熱さと痛みに襲われ意識が少し朦朧としてくる。

それでも何とかドラゴンがいた場所を見ると、かすんだ視界の先にはドラゴン。

だが、その姿が消えた。

何が起こったんだ?


「ぐぁーーー」


今までとは比べ物にならないほどの痛みに襲われる。

無くなった尻尾のあたりが特に痛い。

何が起こっている?

分からない。

だが、体に何かが流れ込んでくるのが分かった。

それが俺たちに痛みを与えているという事も、痛みに苦しみながら分かった。

逃げ出したい。

こんなものいらない。

ドクン。

なぜか心臓の音が聞こえた気がした。

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。

ドドクン、ドドクン、ドドクン、ドドクン。

心臓の音が2つ聞こえるような気がした。


なぜか心音が気になった。

ドドクン、ドドクン、ドドクン、ドドクン。

重なりあうように2つの心音。

その音を聞いてると、痛みと熱さが引いていく。

重たい瞼を持ち上げる。

ラルグがいた方へゆっくりと顔を動かす。

視線の先には、巨大なヘビの姿があった。

ラルグなのかな?

でも、大きすぎる。

ふっと意識が遠のくのが分かった。


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