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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
……の配下
35/58

35話

薄暗い廊下を1人の男性が、自室に向かって歩いている。

その顔に表情は無い。

ほっそりとした体に、高い身長。

髪は青く、背中の中ほどまで長く1つに括られている。

顔の右頬に数枚鱗のようなモノがあり、それが廊下の光に薄く反射していた。


扉の前に来るとすっと手を挙げると、音もなく開く扉。

いつもの事なので、男性は迷うことなく部屋に入っていく。

着ていた上着を脱ぐと、赤く点滅している光に手を(かざ)す。

すると、ただの壁に見えていた一部に映像が映し出された。

男性は特に気にせず映像を確認し、動きを止めた。


「まさかっ!」


映像には、2人の魔王(いや、まだ2匹と言った方が正しい風貌(ふうぼう)かもしれない)の姿がはっきりと映し出されていた。

男性は映像に近付き、魔王たちを確認する。

見間違いかと思ったが、確実に生きている事が分かる。


「生き残ったのか?」


男性は映像に手を伸ばすが、手に触れるのは壁の冷たい感触。

それにはっとして、首を横に振る。


「彼らでは対応できないモノを送ったはずだ」


少し前に異常を知らせる伝言が届いた。

確認してすぐに対応すべく、例外を作り送り込んだ。

彼らよりはるかに強い魔物を。

それで全て片付けられるはずだった。

だが、映像には生きた魔王たちが映し出されている。

そしてその近くには、送りこんだ魔物のドロップアイテムが転がっている。

この事から、魔物がすでに討伐された後だと分かる。


「どうやったんだ?」


魔王たちのLvは確認した。

Lvは2だった。

だからLv6の魔物を送り込んだ。

Lv6にLv2が勝つことなどありえない。

だが、目の前にはその常識を覆す結果がある。


「……仕方ない、次で仕留めるか」


ミスなど許されない。


「ちっ、奴が気付いて処理していれば、こんな面倒な事にならなかったのに」


見逃した奴の顔が思い出され、苦々しい思いが沸き立つ。

力がすべてのこの世界では、奴の方が俺より上。

そのため、奴に文句も言えやしない。


「仕方ない、報告に行くか」


気が進まないが仕方ない。

戻ってきたばかりの部屋から出ると、仲間の1人が部屋に戻る途中だった。


「どうしたの? なんだか機嫌が悪いみたい」


「ちょっとな」


「話せば気分が楽になるわよ?」


部屋が隣同士という事もあり、色々話すことの多い仲間。

つい、愚痴を言ってしまっても仕方ない。


「あら、珍しい失敗ね」


「はぁ、まったくだ。これから嫌味を言われに行くのかと思うと、気が滅入る」


「でも、どうしてもっと強い魔物を選ばなかったの?」


「外部との接触をまだ切っているからな、送れる最大のLvだった」


「あぁ、制約か。私も制約にてこずった事があるわ。あれ、面倒だよね~」


くすくす笑う仲間に、ため息が出る。


「笑い事じゃないんだけどね。はぁ、嫌な事を終らせて来るよ」


「頑張って、今は機嫌もいいはずよ」


そうだったらいいが。

ここ数十年はずっと機嫌が悪いからな。

仕えるこっちの身にもなれってんだ。

仲間と別れて、長い廊下を歩き続ける。

見えてきた、装飾が美しい両扉になんとも言えない気持ちが湧き上がる。

小さくため息を吐き、扉を叩く。


「失礼します。ご報告させていただきたい事がございます」


少しの間の後に、入室許可が下りる。

扉が開くと薄暗い廊下とは裏腹に、明るい王座の間。

それに少し目を細め、足を前に出す。

あ~、何もかもが面倒くさい。

数段高い王座を前に、跪き頭を下げる。


そう言えば、いつからだろう。

頭を下げる事を苦痛に感じだしたのは……そんな事は、ありえないはずなのに。


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