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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
勇者 フィン
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21/58

21話

目の前に広がる荒れ地を見つめる。

数日前までここには魔物がいたと報告があった。

だが、今その姿はどこにも無い。

ジルールを従え、荒れ地を歩く。

砂ぼこりが舞い上がり、視界が悪い。

しばらく歩くと、魔物らしき死骸が転がっている場所に出た。


「もう少し早く来ればよかったか」


魔王が生み出した魔物が死に、荒れ地が広がっている理由は魔王の消滅だろう。

何らかの理由で魔王が死に、世界を維持できなくなった。

維持できない世界は死んでいく。

そして、消える。


「ジルール」


「はっ」


「上空から、動いているモノがあるか確かめろ」


「はっ」


ジルールは背に羽を出現させると、ふわりと羽ばたき空へと舞い上がった。

その姿を何気に見て、視線を死んだ魔物へ向ける。

まだ腐敗は進んでいない。

死んで1日か2日ぐらいだろう。

生きているモノを殺せば、レベルアップに繋がる。


「ご主人様」


「見つけたか?」


「この周辺には動くものはいないようです」


「そうか」


期待していたわけではないので、特に気になる事もない。


「他に何か目についた事はあるか?」


「ここから少し離れた場所に洞窟らしき物の入り口が見えました。中はまだ確認しておりません」


「ふ~ん、何かあるかな?」


洞窟か。

魔王が作った洞窟には興味があるが、無駄足の可能性もある。

それに面倒くさい。


「ジルール、中を確認してこい」


「はっ」


バサッという音が微かに聞こえると、ジルールの気配が遠くなる。

さて、調査はすぐに終わるだろう。

待っている間に何をするか。

魔物の死体をよけながら、荒れ地を歩く。

特に、気になる物もなく。


「無駄な時間だったか?」


ドカンッ!

後ろで大きな爆発音のような音が聞こえた。

慌てて後ろを向くと、巨大な竜巻が巻き上がっている。


「なぜ?」


この世界の魔王が消滅しているのは魔物を見ればわかる。

なのになぜ魔王がいないと維持できない物が、そこにいる?


「ガァーーーー」


竜巻の風が空に舞い上がると。

額に角があり、真っ赤な目。

腕が4本あり、下半身は太くがっしりした4本の脚。

その魔物が俺に向かって走ってくる。


「あぁ、まだ生き残りがいたのか」


ジルールは、主人と魔物の間に立ち掌を魔物に向ける。


「ウィンドカッター」


ジルールの掌の前に風が集まると、それが刃のような形になり魔物に襲い掛かる。


「ギャゥウ。ギィーーー」


魔物の体に大きな傷ができ、そこから血が溢れでる。

それでもこちらに威嚇するだけの力はまだあるようで、不気味な声が周りに響く。


「ジルール、引け」


俺の声にすっと立ち位置を変えるジルール。

魔物がおかしな動きを見せれば、すぐに対応できる場所。


「ウォーター・アロー」


水が矢となり魔物に襲いかかる。

すっと体から魔力が抜けていくのが分かる。


「ギャガ、ギャ――――」


魔物の体に深く刺さった水の矢。

それが効いたのか、魔物の体が大きく横に倒れていく。

バタンという音と同時に、砂が舞い上がる。

しばらくして砂が落ちつく頃、ピンと軽やかな音が耳に届いた。


「おめでとう! さぁどっちで強くなる? 【魔法レベルを上げる】【スキルレベルを上げる】」


「他星で敵を50匹もしくは50人倒す」がクリアできたみたいだな。

それにレベルが上がるのはかなり嬉しい。

魔法かスキル。

どちらがいいだろう?


「どの魔法のレベルが上がるのか、どのスキルのレベルが上がるのかは不明か」


魔法は攻撃、スキルはほぼ防御。

これからは、今まで以上に強い敵が現れるかもしれない。

その場合、どっちが必要になる?

強い攻撃力は魅力的だ。

相手を確実に殺せる武器が欲しいからな。

だが、相手に攻撃された時に生き残る必要があるなら防御も欲しい。

あぁ、そうか。

攻撃された時に生き残る必要があるんだ。

どんなに攻撃力を強めても、死んだら意味がない。

そうなるとスキルのレベルアップが望ましいな。

ただスキルは防御だけじゃない、強打に弓術がある。

この2つのスキルが上がれば攻撃力のアップだ。

……まぁ、良いか。

目の前に表示されている【スキルレベルを上げる】に手を翳す。


「【スキルレベルを上げる】に決定! 実行します」


「おめでとう! 身体強化のレベルを1上げました!」


「次はこちら! 敵の星で命を100個狩れ!」 


身体強化が選ばれたみたいだな。

しかもレベルが1つ上がった。


「次は100個か」


魔王の世界で狩る事でレベルアップが出来るのなら、今度からは魔王の姿が無くても狩りに出ればいいな。

どうせ死んでいく命なら、俺が利用してやる方が有意義だろう。


「戻るぞ」


「はい」


俺の言葉にすっと近付くジルール。

それを確認してから、魔法陣を発動させる。

転移魔法。

そう言えば、これもステータスには表示されないな。

視界に映る景色が、ガラリと変わる。

一瞬眩しさにぐらりと体が傾きそうになるが、足にぐっと力を込めて耐える。

眩しさが落ち着くと視界に入るのは真っ白な部屋。


「お帰りなさいませ」


声に視線を向けると、ヒリルアが跪いて俺を待っていた。


「何かあったのか」


ここで待つという事は、急ぎ知らせる事がある場合のみ。

オウマイトに異常でもあるのかと一瞬考えたが、何かあればわかる。

俺とオウマイトは繋がっているため、不測の事態があれば自然とわかるのだ。

今のところ、問題なくオウマイトは動いている。


「魔王の治める世界を2つ見つけました」


あぁ急いで探せと言っていたな。


「状況は?」


「1つはまだ解放されてすぐかと、もう1つは解放されたのは最近ではない様子です」


「最初の世界に、偵察隊を送れ」


「はっ」


ヒリルアの返事を背に聞きながら白い空間から出る。

すぐにメイドたちから挨拶が来る。

それに一瞬だけ視線を向けるが、すぐに王座に向かう。


「もう1つの世界が気になるな」


偵察隊を送らなかった方の、魔王の世界。

どれくらい前から解放されているのだろう。

俺がこの世界を解放したのは3月ほど前になる。

それより前の場合は、俺より確実にレベルが高いと考えられる。

俺のレベルが8。

同じレベル8の魔王となら何とか戦える可能性はある。

だが、それ以上となると圧倒的にこちらは不利だ。


「向こうがこちらに気付いていないといいが」


もし気付いているなら、一度世界を閉じて様子を見るしかないか?

だが、場所を確定されていた場合、再度開いた瞬間に襲い掛かって来るだろう。

いや、冷静になれ。

まだ気付かれたかは不明だ。

もしこの世界に気付いたら、きっと最初は偵察隊を送ってくるはずだ。


「ジルール」


「はい」


「西大陸に行き、偵察隊が潜り込んでいないか調べてこい」


西大陸にいる人に紛れ込まれると、見つけにくいだろうが。


「はっ」


これで少しは安心か?

もし偵察隊がいたら……それは今から考えても仕方ないな。

王座の間に入り、メイドたちに各自の仕事に戻るよう命令する。

椅子に深く腰掛け、天井を見上げる。


「とうとう出てきたな」


今まで、倒してきた魔王は俺よりレベルが下だった。

そのため、あまり考えることもなく倒すことが出来た。

だが、これからはそうもいかないかもしれない。

配下を思い出す。

ヒリルアは犬種で土魔法使い、ジルールは鳥種で風魔法使い、カルチェはイモリ種で水魔法使いだ。

彼らと連携して?

出来るか?

それとも配下をもっと増やすか?

だが最近のイベントでは配下を増やすモノは無い。

どうやったらあのイベントを起こせるんだ?


「やることが多すぎるな」


最初はもっと単純だったのに。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王が強くなる前に見つけて叩く作戦か。 魔王も余裕こいてないで勇者が旅立つ前にコロしちゃえよう、とRPGやるたびに思ったものですが。それやっちゃうとゲームにならないよね!っていうwww
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