13話
「疲れた~」
「お疲れ様」
アルフェは大丈夫か?
飛んでいる姿がふらふらなんだが……。
「あ~もう! 蝙蝠は体力がなさすぎる! もう少し頑張ってよ!」
何なのこの体、本当に使い勝手が悪い!
寝られないから、寝て体力回復が出来ないし本当に嫌だ。
はぁ、それにしても体から何かが抜け落ちたような気がする。
何だろう?
「そう言えば、何度か何かを知らせるような音が聞こえなかったか?」
ラルグの言葉にある音を思い出す。
「『ピコン』という音の事?」
気のせいじゃなかったんだ。
「あぁ、それだ」
2回ぐらい聞こえたような気がするな。
「あの音、もしかしたら」
「何?」
「俺たちの何かが変化した音じゃないか? もしくは成長したか」
変化? 成長?
成長は強くなるって事だよね。
だったら嬉しいけど。
「アルフェ、確かめてみようぜ」
俺の視界が変わった時に音がした。
だから俺の力が影響していると思うんだが。
もし違ったら、何の音なのか調べないとな。
「ステータスオープン」
ウィン。
魔王名:ラルグ・デグ・シャルマス (1)
世界 :ゼブリタブリ
国 :漆黒の国(闇魔法10%アップ)
魔法:闇魔法(2)、毒攻撃(1)
スキル:毒耐性(1)、暗視、夜目(1.1)、嗅覚強化(1)、身体強化(1)、超音波攻撃耐性(1)、 強打(1)
「やばい、前との違いが分からない。えっと……」
あれ?
スキルに暗視がある。
なんだ、あれは俺が持っていたスキルだったのか。
だったらなんで音がしたんだ?
「何かわかった?」
音の問題は後だな。
「あっ! スキルが増えてる。これはアルフェのおかげだな」
「何? 私のおかげ?」
「あぁ、超音波攻撃耐性が増えてる」
「あはは、確かにそれは私の攻撃を受けたからだね。死ななくて本当によかった」
「怖い事を言うな! あとはスキルがもう1つ増えたみたいだ。強打?」
「強打ね? もしかして最後にほら、尻尾で吹っ飛ばしたから、あれじゃない?」
あれは敵がそうとう弱っていたからできた事だぞ?
それで強打スキルが付くのか?
まぁ、もらえるモノはもらうけど。
耐性が付いたのは何となくわかるが、強打は疑問が残るな。
これも後で考える必要があるかもしれないな。
「アルフェも見せて欲しい」
「いいよ。ステータスオープン」
ウィン。
魔王名:アルフェ・ラ・マッキ(1)
世界 :ゼブリタブリ
国 :暗黒の国(闇魔法15%アップ *特殊条件あり)
魔法:闇魔法(2)、飛行魔法(1.1)、超音波攻撃(1.1)
スキル:暗視、夜目(1)、探知能力(1)、魔力探知(1)
おかしいな、魔法もスキルも増えてない。
でもアルフェは音がしたと言っていた。
成長などは関係ないのか?
「何か増えた?」
「いや、増えてないみたいだ」
え~、私は成長してないの?
音は聞こえたのにな。
あれ?
1.1?
前に見た時は1だったような気がする。
そう言えば、俺にも1.1という数字があったな。
もしかしてこれはレベルか?
レベルが上がった事を知らせる音だったのか?
「変わったところは見つけたが……」
「何? 何か問題でもあるの?」
「問題はないが微妙かな。飛行魔法と超音波攻撃が1から1.1になったみたいだ」
1から1.1?
それだけ?
「はぁ~。確かに微妙だね。何その0.1の成長って、普通は2だよね」
「普通はな。まぁ奴らのゲームだから」
ああ、そうだった。
奴らが普通に成長なんてさせてくれるわけないか。
ほんとにじわじわと嫌味な嫌がらせが続くな。
「まぁ、少しは強くなったのかな」
「……0.1な」
深く考えない、ちょこっと強くなったと思っておこう。
心の平穏って大切だよね。
「初討伐おめでとう! 魔石を使って何をする? 【魔物を出現させる5個】【光と影を産む150個】」
「「魔石?」」
何処にそんなものがあるの?
「アルフェが超音波攻撃をした後に聞こえたポンポンと音がしてたが、あれか?」
何かが倒れる音と同時ぐらいにポンポンと軽い音がしていた。
あれが魔石になっていた音だったのか?
確か、魔物が魔石や道具に変わる事を……ドロップだ。
そうだ、ドロップと言うんだ。
「ごめん、私は必死だったから聞こえなかった」
あの時は、怖くて怖くて余裕がなかったから音なんて覚えてないよ。
「それは仕方ないだろう。俺は土の中で、外の音を聞こうとしてたから聞こえたんだと思う」
「そうか。魔石は外にあるんだよね」
「敵が死んだ場所に落ちてるはずだ」
「だったら早く取りに行こう」
放置してたら、消えてしまうかも。
「大丈夫か?」
アルフェがやる気になってくれるのは嬉しいが、さっきまでふらふらだったのに。
「少し復活! だから大丈夫」
さて、頑張れ私!
うわっ、体がすごく重いし羽の制御が!
「あっ!」
「アルフェ!」
びっくりした。
ふらふらしていたアルフェが落ちてきた。
「大丈夫か?」
「……ちょっと無理かも」
「みたいだな、ここで少し休憩しておけ。俺が取って来るから」
もう飛び立つ力もないのか。
そうとう体力を使ったんだな。
「ごめんね」
「気にするな、取って来るな」
「うん、行ってらっしゃい」
「……行ってきます」
なんだか久々に「いってらっしゃい」という言葉を聞いた気がするな。
俺は1人暮らしだったのか?
「それより魔石だな」
玄関を抜け外に出る。
自然と暗視がチェンジするようになったようで、見え方が変わる。
が、どれが魔石なんだ?
とりあえず、小さい何かが見えるからそれを拾っていくか。
するすると移動しながら落ちている小石に見える物に近付く。
暗視バージョンだと色が見えない。
なので、目の前のこれが魔石なのか判断が出来ない。
そもそもどんな魔石を探せばいいのか知らない。
……大丈夫だよな、これで。
「はぁ、仕方ないこれを拾っていくか……いや、どうやってだ?」
手はないし、口に銜えて1個ずつ?
「マジで? 最悪だ」
しかし、やるしかないよな。
魔石が必要なんだから。
「あ~~! 面倒くさい!」
はぁ、やるか。
3個ぐらい銜えられないかな。
「うぐぇ……2個が限界か」
玄関に並ぶ魔石と判断した小石。
もう何周したか覚えていない。
疲れた。
ふらふらだが、まだ落ちてるんだよな。
「はぁ、あとどれくらいあるんだ?」
ん?
「ラルグ、手伝うよ」
魔石にもたれかかって項垂れていると、玄関が音もなく開きアルフェが飛んできた。
「もう大丈夫なのか?」
「少し復活。だから手伝えるよ。って、魔石ってこれ? 小石に見えるんだけど」
「俺もだ」
アルフェにも小石に見えるか。
うわっ、本当にただの小石だったらどうしよう。
不安になってきたな。
「えっ?」
「暗視バージョンだと色が分からないから小石に見える」
「そうなんだ。それを集めるラルグってすごいよね。いや、無謀なのか?」
「おい」
「あははは、悪い悪い。さて、頑張って集めるね」
ラルグはそうとう疲れているな。
そう言えば、あの魔石なのか小石なのか分からないけどどうやって運んだんだ?
手は無いよね。
もしかして口?
1個ずつ?
うわ~……あれ?
私にも手はない……もしかして足で?
2個ずつしか持って運べないじゃん!
うわ~、最悪だ。
「どうした?」
「いや、手の尊さを感じていたところ」
「あぁ、俺もしみじみそれを感じるよ。まぁ、そんな事を言っていても仕方ないからな」
「そうだね。やるか」
やっぱり両足を使って2個が限界か。
仕方ない、何回も往復するしかないね。
頑張ろう。
タイトルを変更しました。
一番最初に考えていたタイトルです。
硬い印象になるかと思い止めたのですが、やっぱりこのタイトルが気に入っているので変更しました。
これからもよろしくお願いいたします。




