10話
ガチャ、ガチャ、ガチャ……コロン。
ガチャポンから出てきた白いカプセル。
目の前には『開ける』『捨てる』のボタン。
捨てるというボタンがあるという事は、いつか必要になる時があるのか?
首を傾げながら『開ける』のボタンを押すために頭を伸ばす。
手が無いため、頭で押すしかない。
めんどくさい。
「決定! s*r¥dcr@k#」
「「はっ?」」
ギーッギーッ。
不明な言葉を聞いて唖然としていたら、不気味な音が空間に響く。
「今度は何だ?」
「この音も気になるけど。コウキはさっきの言葉を聞き取れた?」
「いや、まったく」
さっきの言葉だと思うけどまったく聞き取れなかった。
決定が日本語なんだから、もう日本語でいいじゃん。
なんであんな意味不明な……まさか、蝙蝠になってまで勉強しなくちゃ駄目なの?
えっ、それはものすごく嫌だ。
「ガッ……決定! 日本語です!」
「…………日本語だって」
あれ?
聞こえ方が変わった。
さっきよりはっきりと聞こえるような気がする。
「……そうみたいだな」
は~、だったらさっきの意味不明な言葉は何だったんだ?
まったく意味が分からない。
「よくわからないけど、よかったんだよね」
「そうだな」
「ねぇ、聞こえ方が変わったよね?」
私だけなのかな?
「アルフェもか?」
「うん。コウキも?」
良かった、気のせいじゃなかったみたい。
「あぁ、確実に聞きやすくなった。さっきも別に気にはならなかったが」
もしかして耳から聞こえていたのではなかったのか?
……そういえば、体が無い時から聞こえていたな。
「気にしないほうがいいかな?」
「そうだな」
「おめでとう! 只今より世界を3.3倍に広げます」
世界を3.3倍?
どんな世界かも知らないし。
そもそも世界がどの広さなのかも不明。
その状態で3.3倍に広げられても困るんだが。
それに0.3は何なんだ?
「本当に広げているのかな? まったく音がしないんだけど」
さっきまで壊れていくような音がしていたのに、広げると宣言した後は無音。
どうなってるの?
「完了!」
……終わったのなら、もうそれでいいか。
いつか、いろいろ分かる時がくるだろう。
「このゲームを続けていくと、スルースキルが上達するよね」
気にしだしたら止まらなくなるだろうな。
「そうだな。気にし始めたら前へ進めなくなるな」
気になることが多すぎるからな。
「さぁ! 世界の名前を決めよう! 回して! 回して!」
次は名前なのか。
それよりヴァンはまだ足りているのか?
「続けて出来るのは初めてだね」
大丈夫なのかな?
「世界や国が出来て、ヴァンの溜まる速度が上がったのかもな?」
「そうなのかな?」
順調に進むことはいい事なのに、どこかに落とし穴がありそうで怖い。
いきなりヴァンが足りないとか言われて、ペナルティを課せられたりとかしないよね?
「回すか?」
「大丈夫だよね? 続けて回しても問題ないよね?」
「……多分大丈夫だろう。回すしか、道がないしな」
そうだけど。
目の前にあるガチャポンを見る。
そう言えば、視力が悪いのにこれだけははっきりと見えるな。
「回すぞ」
「うん」
ガチャ、ガチャ、ガチャ……コロン。
「1つだね」
床に転がり落ちたカプセルを見る。
「あぁ、1つだけだな。俺たちの名前を決めた方法とは違うようだ」
転がるカプセルの前に『開ける』『捨てる』のボタンが出現している。
これって捨てるを選べば、もう一度世界の名前を決めるガチャが復活するのだろうか?
いや、もし次へ進まれたら世界に名前が無い状態になるな。
馬鹿な事は止めておこう。
『開く』を押す。
「決定! ゼブリタブリです!」
ゼブリタブリか。
……特に思うことは何も無いな。
「これが普通の名前なのか、それとも何か意味のある名前なのかさっぱり分からないね」
「そうだな。まぁ、ゼブリタブリなら覚えられそうだ」
無駄に長ったらしくないし。
覚えられるだろう。
「ヴァンが足りません、しばらくお待ちください」
良かった、ヴァンが足りないって出た。
さっきのは考え過ぎか。
それにしても不思議だな。
止まり木に摑まって逆さまなのに、疲れない。
この体勢だから、疲れそうなのにな。
蝙蝠の体って不思議だ。
「あ~! そうだよ、日本語に決まったんだった」
そうだ、日本語に決まったんだ。
なら、あれが読めるようになっているんじゃないか?
「びっくりした! コウキ、どうしたの?」
「いや、言語が日本語に決まったならステータスが読めるようになってるんじゃないか?」
そうだよ。
さっきは言語が決まっていなかったから表示が・・・になっていたんだ。
なら言語が決まった今なら、見られるはずだ。
「ステータスオープン」
ウィン
魔王名:ラルグ・デグ・シャルマス (1)
世界 :ゼブリタブリ
国 :漆黒の国(闇魔法10%アップ)
魔法:闇魔法(2) 毒攻撃(1)
スキル:毒耐性(1)、暗視、夜目(1)、嗅覚強化(1)、身体強化(1)
「よっしゃ~、読める!」
「本当? おめでとう。これでようやく名前が分かるね」
という事は私も見られるのかな?
「ステータスオープン」
ウィン
……クッソ~。
蝙蝠の目は本当に悪いんだな。
ぼんやりしか見えない。
「コウキ、名前が何かわかった?」
「あぁ、ラルグ・デグ・シャルマスだった」
「……そう」
駄目だ。
覚えられなかった。
えっと、フラグ?
「ラルグ・デグ・シャルマスだ。ラルグでいいぞ」
覚えられなかったのが、ばれてたみたい。
でも仕方ないよね。
馴染みのない横文字で長ったらしいだもん。
「ラルグね。わかった。コウじゃなかった。ラルグ、悪いんだけど私のステータス確認してくれる? 蝙蝠は本当に視力が弱いみたい。ぼやけてよく見えないんだよね」
「わかった。見るぞ」
魔王名:アルフェ・ラ・マッキ(1)
世界 :ゼブリタブリ
国 :暗黒の国(闇魔法15%アップ *特殊条件あり)
魔法:闇魔法(2)、飛行魔法(1)、超音波攻撃(1)
スキル:暗視、夜目(1)、探知能力(1)、魔力探知(1)
「俺たちは魔法が使えるみたいだ」
魔法?
「えっ! 魔法? 本当に? ねぇコウじゃなくてラルグ、魔法の使い方は分かる?」
「うわっ、ビビった! アルフェ、落ち着けって!」
アルフェの奴、急に目の前に飛んでこられたら、ビビるから!
というか、アルフェってそんなに魔法が使いたかったのか?
んっ、使い方?
あ~、そうだよな。
魔法を使うんだったら、使い方が分からないと駄目だよな。
ステータスに魔法があったから喜んだけど、使えないと意味がない。
えっと、ステータスには使い方は……載っていないな。
「とりあえず俺の魔法は闇魔法2に毒攻撃1だ。アルフェは闇魔法2に飛行魔法1に超音波攻撃1みたいだ」
ラルグが闇魔法に毒攻撃。
私が闇魔法に飛行魔法と超音波攻撃?
闇魔法は魔王だからかな?
ラルグの毒は蛇の中に毒を持つ種類がいるから?
私が飛行魔法を持っているのは、蝙蝠が飛ぶ生き物だからかな。
でも、魔法を使って飛んでいるの?
知らない間に魔法を使えているって事?
闇魔法に毒攻撃?
これ、どうやったら使えるんだ?
魔法……魔法……わからん。
何か説明があってもいいと思うんだが。
……期待するだけ無駄だな。
「私が飛んでいるのは魔法でなのかな?」
「ん? そうか飛行魔法を持っているんだったな」
「うん。でも魔法を使っている感覚はないけど。ただ、羽があるから飛べると思って飛んだんだけど」
つまり使えると思い込んだら使えるのか?




