93話 スレイヤーのお仕事⑫
午前中の修練を終えた。
3人とも疲れ果てていたのでターニャの家のレストランで昼食を奢ってあげることにした。
アッシュとは早々に「事務仕事が滞ってます!」とギルド職員に拉致られたので「後で執務室に行く」と言って別れている。
「「「美味しい!」」」
パスタとグラタンを食べて3人が感動していた。炭水化物with炭水化物だが、修練の後だから良いだろ。
貸金業者との件が片付いてからまだ数日しか経過していないが、少しずつ客も増えているようで何よりだ。
「タイガさんは博識だから何か良いアイデアがないか聞いてみたいんですが···今良いですか?」
「うん。何かな?」
弟くんが申し訳なさそうに話をふってきた。
「朝のモーニングタイムにサンドイッチの注文が多くてパンの耳がいっぱい余るんですよ。廃棄するのはもったいなくて···何か良い料理を知らないですか?」
パンの耳?だったらあれだろ。
「揚げパン風にするとお菓子やスイーツになるよ。あと牛乳、砂糖、卵に浸して焼くのもおいしいし、グラタンにマカロニの代わりに入れるのもオススメだな。」
「う~ん···グラタン以外はなんか想像ができないんですけど···。」
「じゃあ、作ってみようか?」
「えっ?タイガ料理できるの?」
「パティよ、独身平民男性をなめるでない。」
オリーブ油をフライパンに入れて熱している間にボウルに卵、牛乳を入れて小さな穴をいっぱい開けたパンの耳を浸す。
適温になった油に何もしてないパンの耳を入れてカラッとあげ、最後に粉砂糖をたっぷりとかけた。
「ほい、一個目完成。」
「早っ!」
「すごい簡単なんですね。」
次に、別のフライパンにバターを溶かして浸していたパンの耳を入れる。もうわかるよね?フレンチトースト風だ。
「すごい。主夫···いやシェフだ。」
うん。どっちも違うぞパティ。
最後にまた粉砂糖をかけて完成だ。
「二品完成。良かったら食べてみて。」
どうやらこちらの世界は料理は似ているがパンはパンのようだ。菓子パンとかパンを使ったスイーツは存在しない。
「「「「いただきます!」」」」
試食されるのって緊張する。
「おいしい!」
「すごいです。あんな簡単にこんなスイーツができるなんて。」
「これ毎日食べたい!」
女性陣に好評のようだ。
「タイガさん、これって革命ですよ!安くて簡単でおいしい!!これだけで専門店が開けます!!!」
いやいや、大げさだよ弟くん。
「タイガのお嫁さんになったら毎日これが食べれる?」
なんでやねん。
安い結婚観念やな。
「動機が不純だからそれはない。」
「マジかぁ~!」
パティはとりあえず無視だ無視。
「これ···うちのメニューに入れても良いですか?」
「うん。気兼ねなく使って良いよ。」
「あざーっす!」
弟くんはひれ伏した。




