第3章 絆 「竜騎士⑰」
空気がわずかに振動した気がした。
俺は体を前に投げ出す。
後ろでは、風を切るような音が鳴り、何者かの奇襲があったことを告げている。
そのまま身体能力にものを言わせて、距離をあけて対峙した。
2メートル近い巨漢と、細身だが両手に小振りの双剣を構えた女性。
予想通りのタイミングで、新手が来たようだ。
「今のを避けるか!?」
「·······························。」
無言の女性に対して、驚きの言葉を発したのは巨漢の方だ。身の丈と同じくらいの大楯を構えている。
声が高いのが見た目とそぐわず、緊張感を無くしてしまう。
見た目から言えば、盾使いと暗殺者という感じか。
俺はナックルナイフを破龍に持ち替えた。
ひゅっと、2人が息を飲むのがわかった。どうやら、かなり警戒をしているようだ。
俺は破龍を肩に載せながら、ゆっくりと近づいて行った。
「なぜ、俺に向かってくる?」
そう言ってみたが、明確な回答を期待しているわけじゃない。
ここで対話をしてくるかどうかを試してみたのだ。
「上の命令だからな。」
「·····················(こくこく)。」
反応した。
女性の方は黙りだが、首肯をしたことで、巨漢の言葉に同意をしている。
つまり、こいつらは本気で俺を倒そうという気はないとも考えられる。
相手を抹殺したり、倒すのが目的であれば言葉などはいらない。ただ、寡黙に仕事をこなせば良いだけなのだ。
「そうか。やめるつもりは?」
「悪いが、それはできん。」
「·····················(こくこく)。」
どうやら、悪い奴らではなさそうだった。
「そうか、残念だ。」
俺はそう言い終わる前に、間合を詰めた。
巨漢が前に出て、大楯を構える。
破龍を大盾に叩きつけるように投げ出し、ムーンサルトで巨漢の頭上をこえた。
大楯の前に飛び込んできた女性が視界に入る。巨漢の大楯で動きを止めて、女性が挟み込んで攻撃を加える。
狙いは鋭いが、少し意識が弱かった。本気で倒すつもりなら、相手の命を奪うくらいの気持ちでやらなければ、どうしても動きが緩慢になってしまうものなのだ。
俺は着地の体勢から体重をかけて、巨漢の首筋に肘を落とす。
一瞬動きを止めた巨漢が膝から崩れ落ちる頃には、女性に向けてSGー01を構えていた。
「·······················降参!」
両手を挙げてそう告げた女性に、俺は無情にも引き金を絞った。
ドン!
ランダーと同じように、胸間を撃たれて吹っ飛ばされた女性は、「嘘でしょ!?」とでも言うように驚愕に顔を染めていた。
よく覚えておいた方が良い。
降参とは、武器を手に握ったままするものではないのだ。
それがわからないようでは、今後生き残ることは難しいと知るべきだった。
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