第3章 絆 「竜騎士⑩」
「別の公爵家の台頭というのは?」
政務に関する能力というのは、教育によってばかり研鑽されるものではない。
物の捉え方や先見性、他の政策との関連性から相乗効果を生み出すための采配、先天後天的な能力や経験・知識など、あらゆるものに秀でてこそ開花されるものである。
それに関して他の公爵家の人材が勝るというのであれば、ドレインセルク公爵家が対等、いやそれ以上の実力を示して立場を逆転させることは困難を極める。
一朝一夕には、優れた人材など育つわけがないのだ。
「王家と深い血族関係にあるキャロライン公爵家に、マルガレーテ様というご令嬢がいらっしゃいます。」
「ご令嬢?」
「はい。キャロライン公爵家は、代々王家の側近として、王政のご意見番的な立場を踏襲されています。お役目的には、議題として出される案に対して徹底的な反意を唱えられ、その議案に欠点がないかを見極めるための存在といえます。」
日本の国会における野党みたいなものか?
そのお役目であれば、ある程度の説得力が伴った反意を示すだけで、国の運営を左右する議案の洗いだしをかけることができる。それに、極端に高い能力を要することもなく、立場を誇示することもできるだろう。
しかし、ご令嬢というのが、それとは別の可能性を示していた。
仮に、そのご令嬢が秀逸な政務能力を保持していたとして、果たして当主や別の血族を差し置いて政の舵を取らせてもらえるものだろうか。
「そんなキャロライン公爵家において、唯一武勲にその名を轟かされたのがマルガレーテ様なのです。」
「そのマルガレーテ様の武勲と言うのは、統率力に優れた結果ということかな?」
「マルガレーテ様は統率力や戦術はもちろんのこと、自らの剣技や魔法においても他者の追随を許しません。」
何それ?
完璧超人か?
「そして、四方の守護者の一角、北の黒虎スワルトゥルの加護を受けておられるのです。」
四方の守護者。
ヴィーヴルと同じく、真神に匹敵する存在の名が出てきた。
そして、その加護を持つマルガレーテ·キャロライン公爵令嬢。
そんな存在がいるのであれば、なぜ竜騎士の出現などと騒いでいるのかに、疑問を感じられずにはいられなかった。
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