第3章 絆 「竜騎士⑤」
「見目麗しい、全裸の女性だったそうだ。」
「······························。」
召喚された竜騎士は、女性だったのか?
「白磁のような肌に白銀の髪を持つ、それはもう絶世の美女だったそうだ。」
ドレイグも隣で話を聞いているアレクセイも、何を想像しているのかは知らないが鼻息を荒くしている。
オッサン達は欲求不満のようだ。気持ち悪いから、その恍惚とした表情はやめてくれないかな。
「だが、そこで驚愕の事実が知らされたのだ。召喚された女性は、自らを竜の化身ヴィーヴルと名乗り、氷のような瞳でこう言った。」
ヴィーヴルって···まあ、そんな気はしたが···。
「我を未熟な力で召喚しようとしたふとどきものは貴様らか?とな。」
それはたぶん、あれだな。
召喚されたのではなく、何らかの違和感を感じたヴィーヴルが、神威術か何かで自らやってきた可能性が高い。
身勝手な振る舞いをする奴の存在を感知し、様子を見に来た気がしてならない。
「召還した者は事情を話し、守護者であるヴィーヴル様に懇願をした。この国を救って欲しい···とな。」
「直接の手助けはできないと、突っぱねられたのではないですか?」
「おお···やはり、この伝承を知っておられたか?」
「いえ、初めて聞きましたが、ヴィーヴルは四方の守護者の一角です。しかも、彼女はこの世界では真神にも匹敵する存在。直接的な手助けは、神界の不興を買うことになりかねないですから。」
「···く、詳しいのだな。」
「俺がこの大陸に現れた時に一緒にいた竜の話が出ましたよね?」
「そうだな。」
「あれがヴィーヴルですよ。」
「「「······························。」」」
全員が押し黙った。
ドレイグやアレクセイだけではなく、ルイーズや後ろに控えていたタニア達も同様だ。
この様子だと、全裸女性と白銀の竜が、同一の存在であることは考えもしなかったらしい。自らが竜の化身と言ってはいるのだが、人は見た目の印象を鵜呑みにする習性があるからな。
ヴィーヴルが詳しくは伝えていなかった公算が大きいが、伝承や神話などその程度のものだ。事実との差違などが、必ず生まれたりする。
「ま···まさか、美しい全裸女性と白銀の竜が同じ存在とは!?」
驚くのは良いが、全裸女性のところだけ強調して言うのはどうかと思うぞ。ギルマスさん。
「この大陸のことをあまりよくは知らないが、一部の竜人や獣人が、竜化や獣化で姿を変えることはご存知ではないのですか?」
「知らない···と言うよりも、亜人種は独自のコミュニティを築いていて、あまり姿を現さない。」
「彼らに対して、差別意識は?」
「それはないが···むしろ、彼らの方が我々人族を蔑んでいると思う。」
「なぜ?」
「彼らは個々の能力に優れているからな。共存しようとは思っていないだろう。」
ふむ···こちらの大陸ではそうなのか。
興味本位で聞いてみたが、まあ良いだろう。
「話がそれました。ヴィーヴルは擬人化ができる。人の姿で現れた理由はわかりませんが、おそらく竜の姿のままでは不都合を感じたのでしょう。」
人間の前にいきなり竜が現れたとなると、どういった反応が出るかは想像に難くない。
ヴィーヴルは優しい性格をしている。
恐怖や敵意といった感情が生まれるのを、回避したのだろう。
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