第3章 絆 「竜騎士②」
「く···何が起こった···。」
意識を取り戻したルイーズは、すぐに状況を把握できなかった。
竜騎士ではないかと思われる男性が他の町で見つかり、こちらに向かっているとの報告があった。
ギルマスのアレクセイと王国騎士団長のドレイグが、異常なテンションで歓迎会を開こうと言い出した時には、「今の状況で何を言っているのか?」と呆れはしたものの、逆に考えればこんな状況だからこそ、そういった催しは必要なのかもしれないと思い直した。
魔物の氾濫に次いで、悪魔らしき存在が確認されたことで、それを知る者の中には重苦しい雰囲気が立ち込めている。
しかし、それを打開できうる存在である竜騎士の出現は、現状では最も明るいニュースと言えた。
仲間が死傷したことで、ナーバスにはなっていたルイーズではあったが、彼女自身も今無事でいられるのは、間違いなく彼のおかげと思っている。
きちんとした礼も言わずに逃げ出したままでは、人としての礼を失してしまう。
そう思って、細々とした準備を手伝った。
そして、彼が到着したとの報を受けた後、突然の閃光と爆音に意識を失ってしまったのだ。
ぼんやりと経緯を思い出したルイーズの視界に、剣の柄に手をかけたギルマスと騎士団長の姿が映る。
『!?』
この異変は、やはり敵襲か!?
そう思ったルイーズの視界に入ってきたのは、紛れもない彼の姿だった。
「あなたは!?」
思わず叫んだルイーズの言葉に、目の前にいる者達の視線が集中する。
「ああ···良かった。無事だったか。」
労るような、優しい声が耳朶を打つ。
彼が微笑みを見せて、自分を見ている。
「···あなたのおかげだ。あなたがいなければ、私はこの場にはいなかった。」
「いや···仲間を助けることはできなかった。すまなかった。」
命の恩人である彼が頭を下げてきたことに戸惑う。
なぜ、彼が謝罪をするのかは理解ができなかった。しかし、それだけで彼が誠実な人間であると感じられた。
この時、タイガの真意は語られることはなかったが、本人は様子をうかがっていたことで、結果的に冒険者たちを見殺しにしてしまったのではないかという自責の念を少なからず持っていた。
客観的に考えても、あの状況で複数の冒険者を救うことは難しいことではあった。
そして、それを理解しているタイガではあったが、それでも目の前で救えなかった命があったことは、虚無感のように心の内にこびりついていたのであった。
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