第3章 絆 「新天地⑧」
「ま、魔族!?」
「いや···こいつは···もっと上位の···。」
「エアカッター!」
冒険者の1人が瞬時に魔法を放つ。状況判断としては申し分ない。
驚くほどのスピードで展開された複数の風撃は、奴の体を四方から切り裂くかに見えた。
「······························。」
しかし、微動だにしなかった対象の周囲で忽然と消えてしまう。
「な!?」
「嘘···だろ?」
「································。」
絶句する冒険者たち。
今の魔法は、それだけ必殺の威力を秘めていたということだろう。
対して、目の赤い男は興味すら引かないような表情で、冒険者たちを見下ろした。
「何だ、今のは?蚊ほどの威力も感じられん。」
「「「!」」」
···そうか、コイツは魔法には強いが、蚊には刺されるということか。
ふざけているのではなく、蚊に刺された経験があるということは、対抗できるということだと認識ができた。
すなわち、物理攻撃は通るということだろう。
「そう言えば、貴様だったな。」
ゆっくりとそんな言葉を吐いた奴は、右手の人差し指を突きだした。
ピシュン。
「···ぐわぁぁぁぉぁぁっ!?」
空気を穿つような音が響き、すぐに絶叫が迸った。
奴が突き出した指の延長線上に、一番体の大きい冒険者が肩の付け根を抑えてうずくまる姿があった。
魔法かどうかはわからないが、奴の攻撃が冒険者の体を貫いたのだ。
「魔族ごときと同じにされたのでな。誇りを傷つけられて、無事に帰す訳にはいかない。」
やはり、奴は魔族ではないということだ。
これは、非常に厄介なフラグが立ったのかもしれない。
「···何だ?おまえは、何なんだ!?」
「その前に教えろ。貴様たち以外の人間は、どこに隠れている?」
「何だ?何を言ってい···ぐぎゃあぁぁぁぁーっ!!」
再び、空気を穿つような音が響き、もう1人の脇腹から鮮血が飛び散った。
あれ···これってヤバいやつだよな?
このままだと、様子見どころか全員が殺されてしまうのじゃないだろうか?
「隠すとためにならんぞ?」
奴は、最後の1人に指先を向けた。
む···紅一点の···しかも、それなりの美人さんじゃないか···。
むむ···。
「答えないのなら、それでも良い。ほかを当たれば良いだけの話だからな。」
奴の顔に、またあの凄みのある笑みが浮かぶ。
『···僕は最高!』
もう少し情報を引き出して欲しかったのだが、さすがに見殺しにはできなかった。
心の内でキーワードをつぶやき、白銀の鎧を纏う。
同時に、気配を消すことをやめた。
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