第3章 絆 「新天地②」
10体以上のハイオログが、怒濤のように攻めこんできた。
ハイオログは3メートルを超える身長に、筋骨隆々の体をしている。一般にトロールと言われる魔物の上位種にあたり、外見はオーガに酷似している。
最大の特徴はトロールと同じ怪力と耐久性にあるのだが、上位種とあって特殊なスキルを保持している。
体の損傷を復元する力。
どれだけダメージを与えようとも、短時間でそれを復元させてしまうため、この地域では悪夢と呼ばれ、その討伐には上級魔法士の力が必要であるとされている。
ただ、魔法耐性も高いハイオログの体を滅するためには、それなりの魔力と技術が必要となり、1体を倒すだけでも、相当な消耗が発生する。
今回の戦いでは、そのハイオログが20体は発生しており、これまでの経緯で半数近くまで減らすことに成功していた。
しかし、そのための犠牲は多大で、すでに討伐の任にあたっていた者の3分の1が戦闘不能の状態に陥っている。
「ジール、あれを防ぐ手立てはあるか?」
全体の指揮をとっていた壮年の男は、傍らにいた同年代の魔法士にそう尋ねた。
「残っている魔法士を総動員しても、半数を無力化できるか微妙なところだな。」
「···そうか。」
指揮を取る者として、このまま多大な犠牲を強いるわけにはいかない。しかし、ここを突破された場合、この先に位置する王都が魔物の群れに呑み込まれてしまう。
「マルガレーテ様がいれば···。」
決断を鈍らせていると、ジールのつぶやきが聞こえてきた。
「言うな。あの方は王城の守護の要だ。」
「そうは言うが···いや、そうだな。」
ジールの歯痒そうな表情を見て、男はすぐに決断を下した。
「魔法士の総力で、ハイオログを撃て。その後は、動ける負傷者と魔法士だけで、王都に戻るんだ。」
「···何を言っている?」
「ハイオログの後続には、数千の魔物が控えている。後を考えれば、魔法士の力は可能な限り残しておくべきだろう。」
「バカな!それでは死にに行くようなものではないか!?」
「身を呈して、王都を守るのは騎士の務めだ。」
「それは···我ら魔法士団も同じだ!」
「魔力が尽きれば、魔法士は奴等の恰好の的だ。この地は我ら騎士団で時間を稼ぐ。」
「·······························。」
「王国騎士団長ドレイグ·ブルマン最後の晴れ舞台だ。」
「バカが···。」
その時、突然周囲に大きな影が差した。
「なんだ!?」
「ド···ドラゴン!?」
高速で飛来した白銀の竜が、2人の上を薙ぐように過ぎ去って行った。
ハイオログ達の上空に差し掛かったそれは、一度体を回転させたかと思うと、そのまま進行方向に飛び去って行く。
「···何だったんだ。」
「お···おい、ハイオログ達の後ろに人が···。」
魔物達と防衛側との間には、簡易な砦が築かれており、現在はそこに近づかせないために、その砦柵のこちら側から牽制の魔法や弓が放たれていた。
砦柵の外側にいる人間で生き残った者はおらず、その亡骸すらも魔物達の糧となり消えていたのだ。
「まさか···ドラゴンから···降りてきたのか···。」
「···伝説の···竜騎士···。」
2人は顔を見合わせ、やがて期待に満ちた表情で頷きあったのだった。
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