第3章 絆 「神龍⑮」
竜孔を覚醒させると言われて、のたうち回るような苦行を行った。
その結果が、『股間が光るだけ』などと言われたら、いくら笑いを尊ぶ関西人でも、たぶん本気で泣く。
「ああ、それは第一の竜孔が活性化したからだ。ムーラムーラという孔でな、人間で言うなら骨盤の底辺りになるな。」
場所的にヤバい名前だな、おい。
「その効果はなんだ?」
「生命力の増大だ。身体の基礎的な能力が向上すると思えば良い。」
「···この光っているのはおさまるのか?」
「ああ、すぐにおさまるだろう。」
本気でホッとした。
ずっとこのままだと、目立ち過ぎてまともな生活ができないからな。股間が常時光る人間なんて、奇異の目で見られるだけでは済まないだろう。
「他の6つの竜孔の効果も、教えてもらっても良いか?」
「ああ···順番に言うぞ。第二は下腹部にあるスワープシュタイーナ。これは、精神を司る孔だ。第三に腰のあたりにあるプニプーラ、ここは第一、第二が培った力をコントロールする孔。第四は、胸の辺りにあるアナーアイタ。全体の力を安定させる孔だ。」
どうやら、竜孔とは基本的な力を底上げするもののように思えた。きっちりと頭の中で理解をしていく。
ただ、そのふざけたネーミングはどうなんだと思うが···。
「第五は喉の辺りに位置するアイーン。これは少し特殊でな、表現のための孔だ。」
「表現?具体的な効果は何だ?」
「竜種の場合なら、咆哮で相手を威圧したり、ブレスの魔法陣を組むために必要な力を集束させる孔なのだが···人間の場合は···。」
「ん?」
「事例がない···わからんな。」
なんじゃい、そりゃ。
「···わかった。後で試してみる。」
「そうだな、そうしてくれ。」
ヴィーヴルは気まずそうに答えた。
まさか、俺がブレスのようなものを吐くわけではないだろうな···。一抹の不安はあったが、次の孔の説明を促す。
「第六は眉間に位置するアージュナーだ。理性から感性への切り替えを司る孔だ。」
「···直感力ということか?」
「そうだな。直感や洞察、瞬時の判断力が強化されると思えば良い。」
理性から感性に切り替わるということは、戦闘時などの非日常的な場面では、かなり有用なことである。瞬時の判断に、タイムラグが生じることがない。
竜孔の覚醒とは、肉体的精神的なものに加え、そのコントロールまでもが強化される状態をいうのであろう。
「最後に、第七の孔は頭頂にあるサハスラーラだ。これは自身を超越する意識を司る。」
「···第六感ということか?」
「もっと広域なものだ。意識の解放とでも言うべきかな。」
さとりのようなものだろうか?これについては、漠然とした解釈しかできなかった。
「ぬしはすべての竜孔を覚醒させた。だが、まだ覚醒させただけとも言える。それを自分のものとして定着させるためには、まだまだ時間もかかるだろう。じっくりと、ものにするが良い。」
おもしろい!早く続きが読みたい!と思っていただければ、広告を挟んだ下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけるとモチベーションが上がります。
よろしくお願いしますm(_ _)m。




