第3章 絆 「神龍⑬」
「期待している。」
真顔で、ぼそっと溢したヴィーヴルの言葉に、重いものを感じた。
「···何をだろうか?」
「ぬしが話していたように、邪神シュテインの動きが活発化している。我らも備えねばならない。」
「俺に何を期待している?」
「そうかまえるでない。今代のグルルとして、守護者をまとめよとは言わん。」
相変わらず、この世界は俺を翻弄してばかりだ。いや···性質は違うが、翻弄されていたのは前の世界でも同じか。
「俺には、数多の敵を殲滅できるだけの力はない。できることと言えば、相手をかきみだし、その隙を突くことくらいだ。それに、世界を救うなどという、大それたことを言うつもりもない。ほんの一握りかも知れないが、可能な限りの人の命を救いたいと思うだけだ。」
「ふふ···それで良いのだ。その想いが、魔王としての役割も果たしたのだ。」
擬人化している古代竜の笑顔。
正直なところ、それが本来の感情なのかはわからない。ただ、ヴィーヴルの笑顔には、何らかの期待が込められているように見えた。
「それでは、そろそろ始めようか。」
「···何をだ?」
突然のヴィーヴルの問いかけに戸惑った。何の脈絡もない、開始宣言。
「ぬしが救える命を増やすための儀式のようなものだ。」
「···儀式?」
「そうだ。今からぬしの竜孔を覚醒させる。」
「竜孔?」
「竜孔とは、霊的な放射体を発散させる場所のことだ。体内に全部で7つ存在する。背中を向けてみよ。」
俺は素直に言う通りにした。
竜孔が何かを理解できていないが、今さら疑っても仕方がない。
「どれ···。」
ヴィーヴルは掌を俺の背中に当て、何かを窺うように少しずつ位置をずらしていった。
「うむ···やはりあったか。」
まったく展開についていけずに、何を言っているのかを質問しようと思った矢先だった。
「よし、力を抜いて衝撃に耐えるのだ。」
「え?」
俺の体内で、何かが爆発するような衝撃が駆け抜けた。
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