第3章 絆 「神龍⑧」
「それで、目的は?」
「唐突だのう。互いに何者かわかっておらんと思うが。」
女性は悪戯っぽく微笑むが、瞳の奥には試すような光が宿っていた。
「古代竜。」
「ほう···我を古代竜とな。ふふ···この体は、人そのものだと思うがの。」
「その発想に至るのが、肯定的な答えだと思うが?」
「ぬ···なぜじゃ?」
やはり、人にしては思考が浮世離れしている。
「俺は"古代竜"という単語を発しただけだ。普通の人間は、そこから自分が古代竜であるかと問われているとは連想しない。」
「む···。」
彼女は一瞬だが、悔しそうな表情を見せた。
「それに、こんなところで若い女性が裸で暮らしているのはあり得ない。」
「むむ···。」
「ついでに言えば、普段からそんな格好で暮らしているのなら、もっと手足が薄汚れたり、小傷を負っていてもおかしくはない。キレイすぎるんだよ。」
裸足で歩いているのに、汚れ一つない。それに、近づいた時に確認をしたが、手足の皮が厚くなっている様子もなかった。このような洞窟のようなところで暮らしているのならば、農民や漁師のような掌をしているのが自然だ。
普段とは違う姿形になっていると言っているようなものだ。
「ふむ。まぁ、ただ者ではないとは思っておったが···そうだ、我は古代竜と呼ばれておる。」
「名前はあるのか?」
「名前?」
「会話をするのであれば、互いに名前を伝えた方が···いや、俺がまだ名乗っていなかったな。タイガ·シオタだ。タイガと呼んでくれ。」
古代竜は呆気に取られた顔をしていたが、やがてぷっと吹き出した。
「ぷふっ、ふふふ。やはり、おかしな奴だ。良かろう、我が名はヴィーヴルだ。」
「そうか。よろしくな、ヴィーヴル。」
「ふむ。それで、ぬしは何者だ?」
古代竜とは、もっと頑固で気難しい存在だと思っていたのだが、意外なほど気さくだった。
「人間だ。」
「そんなわけがなかろう。我のブレスを受けて、人間が五体満足でいられるはずがない。」
「ああ···あれはないだろ。いきなりで死にかけたぞ。」
「いや、それがそもそもおかしいのだ。あれは何の力だ?ぬしの傷は、我のブレスで負ったものではないであろう。」
腹を割って話すべきだと感じた。
恐ろしく強大な存在。その古代竜が、対話をしようとしているのだ。
結果はどうあれ、俺は自分に起きた経緯の説明を始めた。
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