第二章 亜人の国 「正道②」
「それにしても、とんでもないことをやりおったの。」
各国首脳との合同会談のために、神聖ユラクト興国に大聖女ミリネを迎えに来ていた。
既に事情をある程度は把握しているミリネではあったが、この大陸の共同認識を固めるための布石が、ヘイド王国への襲撃理由の一つであったと改めて知り、感嘆しているのである。
「怒りに任せて、ヘイド王国を潰したとでも思っていたのか?」
「元の爺様なら、そうであったとしても、おかしくはないからの。」
孫にそんなことを言われる祖父とは···本当にただのバカか。
「そんなことをしても、誰も報われないだろう?」
「そうじゃの。爺様はスゴいのじゃ。もしかして、ウェルズ公国でのシーサーペント討伐や、妾に会いに来たのも、それを見越してのことだったのかの?」
「だったら良いんだが、そこまでの先見性はない。」
「謙遜するでない。爺様は、妾の自慢の爺様じゃ。」
実年齢はともかく、あどけない表情でそんなことを言うミリネの頭を優しく撫でた。
「ありがとう。」
「じゃが、ヘイド王国ではテトリアも襲撃してきたのじゃろ。どうやって退けたのじゃ?」
···そこに触れるか?
説明するのが相当に難しいのだが。
「自分の至らない部分に気づいたらしい。何か···考えごとをしたいようだった。」
「ふむ···至らない部分とは?」
「あまり難しく考えなくて良い。欠陥だらけだからな。」
「ふむ?まあ、そうじゃな。確かに、欠陥しかないからの。」
稀代の英雄と呼ばれたテトリアは、ただの虚像だ。
人は正しく成長し、徐々に力を蓄えていくべきなのに、奴は力だけを先に得てしまった。
魔人とて、同じようなものだろう。
身の丈に合わない力など、毒にしかならない。
「爺様は、これからどうするのじゃ?」
「別の大陸に行こうと思っている。」
「前に住んでおった所かの?」
「その前に、中央にあると言われている大陸に行くつもりだ。」
この世界には、3つの大陸が存在しているらしい。
アースガルズの書庫にあった記録を、カリスが調べて教えてくれたのだ。
そこには、神界につながる神殿があるらしく、神々と対話ができる祠が地下に存在するという。
堕神シュテインを何とかするためには、神アトレイクの存在が必要だ。
まずは、その地に向かうための方法を模索しなければならなかった。
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