82話 スレイヤーのお仕事①
翌日、朝からギルドに行き、討伐依頼が出ていないかを掲示板で確認した。
魔族や魔物の目撃情報が出ると掲示板に捜査もしくは討伐依頼が出る。
これの多くは一般人から提供された情報が発信源となっている。
通常、スレイヤーは定期的な巡回をパーティーを組んで行っている。そこで強力な魔物が発見された場合も掲示板に依頼が出される。
巡回をしているパーティーで対応が可能な場合はもちろんその場で討伐を行うのだが、身に余ると判断されるとギルドで討伐ランクが検討され、レイドとして依頼が出される仕組みだ。
因みにアッシュ達と出会ったのはこの定期巡回中だった。
魔族に関してはそれぞれの個体が強力なため、ランクA以上のスレイヤーに指名が入ることがほとんどだ。複数体が一緒に行動をしている場合などはケースバイケースでレイドととして参加者を募ることもあるらしい。
魔物が発見される頻度は週に1回程度、魔族は月に2~3回程度くらいらしい。
今は掲示されているものは何もない。
平和で何よりだ。
受付カウンターに行って俺への指名任務がないかを確認する。
「お疲れ様です。ギルマス補佐への任務は今はありません。ですが、昨日の事件により基準の任務はこなされました。特別報酬も出ていますよ。」
スレイヤーは固定給制でもあるので、一定期間で所定の任務数をこなす必要がある。ランクに応じて規定があり、任務の難易度や数でポイント計算され査定がされる。
俺はマイク·ターナーの件で今回の規定任務をクリアしたようだ。
口座を確認すると、3000万ゴールドが報酬として振り込まれていた。
こんな緩い感じでお金だけが貯まっていくがそれでいいのだろうか···。
ふとそんなことを考えていると、後ろから他のスレイヤーの話し声が聞こえてきた。
「昨日、ギルマス補佐がまた魔族を素手で殴り倒したらしいぞ。」
「マジか?本当に化物かよ。」
「普通はランクAが3人がかりでも命がけなのにな。」
「いくらなんでもチートすぎんだろ。」
深く考えるのはやめにした。
結局、ギルドでは何の仕事もなく暇をもて余してしまったので、ブランチを取るために自宅の1階にあるレストランに行くことにした。
依頼や任務がない場合は鍛練や装備を整えたり、巡回に時間をあてるスレイヤーが多いのだが、俺には知人が少ないので、できる事が限られている。地理に疎いので一人で山に入ったりするとほぼ100%迷子になるだろうから巡回にも行けない。
ギルドを出る時にあいつを見かけた。
そうラルフだ。
朝からすでに酔っていて、壁に向かって何やらブツブツと呟いている。
こいつ···あぶない。
関わりあいにならないように無視してギルドを出ると前から来た誰かとぶつかった。
「あっ!」
バランスを崩しかけた相手を抱き止めるとくりくりっとした大きな瞳をしたパティがいた。
「あ、タイガ。おはよ~。」




