第二章 亜人の国 「魔王の鉄槌⑱」
「何か話したいことがあるのか?」
とりあえず、対話をしてみることにした。
「そうだね。僕がどのような思いをして、君との再会に漕ぎ着けたかを聞いてもらおうかな。」
「···今のセリフ···気持ちが悪いから、やめてくれないか。」
まるで、恋人との再会で出るようなセリフだ。
「気持ち悪いって、僕をなんだと思っているんだ!?」
「ホモエルフ。」
「ち、違う!確かに、今の外観はエルフだけど、中身が違うことくらいはわかるだろ?」
「まあ、一応な···多重人格のホモストーカーだろ。」
「違う!相変わらず失礼な奴だね君は!!」
「ふむ···ああ、そうか。思い出したよ。"感度が良すぎて、すぐに漏れる奴"だったか?」
「ぐっ、余計なことだけ憶えているとは···。」
「それで?ソーロー君は、また俺の体を狙っているのか?」
「ソーローって言うなっ!?···ふ、ふん、当たり前じゃないか!君以上に僕と相性の良い体はないんだからなっ!!」
本当に···その誤解を招く言い回しはやめてくれないかな?
BLじゃないんだからなっ!
「それにしても、よく生き延びたものだな。」
「フッ、確かにあの時は、アトレイクに淘汰されるところだったよ。でも、僕は不死身だからね。」
「ほう、すごいな。できれば、どうやって生き延びたのか、その素晴らしさを教えてくれないか?」
基本的にコイツは精神年齢がガキだ。感情が操作しやすい。
怒らせて隙を作ったり、煽てれば調子に乗っていろいろと吐いてくれるタイプだろう。
「ふふん、君も僕に憧れるのかい?良いだろう。教えてあげるよ。あの時、僕は思念体としてアトレイクに淘汰をされそうになった。でもね、そんなこともあろうかと、僕の思念体の一部を、近くの雑草に忍ばせていたのさ。」
顔面を殴りたい衝動にかられたが、とりあえず苛立ちを抑え込む。
「それは···たまたま雑草におまえの残滓がこびりついていただけじゃないのか?」
「ざんし···って何だい?」
「残りカスのことだ。」
「···ま、まあ、そういうことかな。···いやいや、ちょっと待てーいっ!誰が残りカスだっ!!」
「ん?おまえの子孫の間では有名な話だぞ。」
「え····有名って、どんなことでかな?」
「聞きたいのか?」
「え···ああ、まあ別に聞かなくても、ぼくを讃える話だとは思うけどね。」
「そうだな。そんな話だと良いな。」
「···それで!?」
「何がだ?」
「わかっているだろう!?僕は子孫達に、何と思われているんだ?」
「ただじゃ教えられないな。」
「···相変わらず、ムカつく奴だな。」
「おまえもな。それで、交換条件だが、情報が欲しい。」
「····何の情報だよ。」
「まず、この国の重鎮たちはどこに行った?」
「重鎮?」
本当に頭が悪いなコイツ。
「国王とか、宰相もしくは大臣とかのことだ。」
「ああ、だったらそう言えば良いのに···そいつらなら、だいたいその辺りにいると思うよ。もう生きていないだろうけど。」
奴が指をさしたのは、血の海の中にある無数の死体だった。
「他にはいないのか?」
「そう言えば、国王らしいのが奥に向かっていたから、通路で首をはねといたかな。」
「···わかった。それで、シュテインはどこにいる?」
「それは答えられないな。情報は一つで十分だろ?」
奴はこれ以上のことを聞いても何も答えないというように、首を左右に振った。
「わかった。おまえの子孫たちは、こう言っていたぞ。Scraps in the scrapsだと。」
「スク?え?今、何と言ったんだ?」
クズの中のクズ(Scraps in the scraps)。
「俺のいた世界では、最大限の誉め言葉だよ。」
「そうか···いやあ、さすがに僕の子孫たちはわかっているなぁ。ハッハッハッ。」
随分とご満悦のようだ。
完全に意識が別の所に行っている。
俺はその隙に、攻撃の準備を開始した。
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