第二章 亜人の国 「魔王の鉄槌⑧」
目を覚ましてから、じっくりとストレッチを行った。
ストレッチは体を解したり、腱を伸ばす効果だけではない。骨格を正常化し、血流を良い状態に導くのだ。
頭痛や吐き気はおさまり、気持ちの上でのわだかまりも消えている。
体調の悪さは睡眠とストレッチ
で、心の安定はラピカとジルとの会話で解消をされたようだ。
エルフ達の様子を見てみたが、彼らは治癒により、肉体的には多少は回復をしたかに見える。
ただ、その眼には暗い陰が宿り、法術や短時間の休息だけでは、解消されない精神的な患いを連想させた。
「そのままで良いから、話だけ聞いてくれ。今から研究所に出向いて、そこに囚われているエルフ達を連れ戻してくる。その後は体調を見ながらになるが、あなた方と同じ種族の所へ送り届けるつもりだ。辛いだろうが、できる限り前向きな気持ちを持って欲しい。」
元気づけるようにそう言ったが、彼らは大した反応は見せなかった。
人族への不信や恨みもあるのだろうが、家族を失った辛さや、長い間幽閉されていた身の上で、明るい展望など持つのは難しいのかもしれない。
先に希望が見いだせる何かを、彼らに認識してもらえる状況を作るしかないと思えた。
先ほどと同じように、研究所へと転移した。
収容所よりも警護は厳しいのだろう。ピリピリとした警戒感が肌をつく。
「もう1人で先走らないでね。」
「ああ、わかってる。」
「作戦は?」
研究所は、山岳地帯にある湖の畔にあった。
薬物の生成に水は不可欠だ。湖の水を何らかの方法で浄化して利用しているのだろう。建物から配された何本もの管が、湖に延びているのが確認できた。
「俺は水路から侵入して、エルフ達を捜索する。2人には外からの陽動を頼みたい。」
「それだけか?」
「陽動については、手法は任せる。今から30分後に開始だ。研究所が騒がしくなったら、逃走する時のサポートを頼む。」
「そんな大雑把な内容で良いのか?」
「お互いに組むのは初めてだからな。それぞれにやりやすい手法の方が良いだろう。」
「オケイ。私とラピカはいつも通りのスタンスでやるわ。」
「危険を感じたら、すぐに引いてくれ。」
「ああ、タイガも気をつけてな。」
こうして、研究所での救出作戦が幕を開けた。
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