第二章 亜人の国 「魔王の鉄槌⑦」
何往復も教会と収容所を転移し、救出した全員とラピカ、ジルを運んだ。
一度に転移できる人数が明確ではないため、不慮の事故を防ぐためである。
デュークとパウロに治療をお願いして、睡眠をとる。
転移術を乱用したせいで、頭痛と吐き気がひどかった。
すぐに眠れるものではない。兵士達を尋問して吐き出させた事実が、重くのしかかってきた。
若い男性は実験体として研究所送りとなり、同じく若い女性は兵士たちの下卑た行為の末に命を落とし、そして子供たちは体力的にもたず···。
前の世界でも、戦争などが起これば同様の犠牲者が出る。だからといって、慣れるものではない。むしろ、怒りがふつふつと沸き起こるだけだ。
何度も深く息を吸い、気を静める
ここで感情的になるわけにはいかない。短絡的な思考は、身を危険にさらす。
「大丈夫?」
そっと、ジルが俺の頬に手を触れてきた。
目を開くと、ラピカと一緒に目の前に立っている。
俺はまだまだ未熟なのだと、痛感させられた。
敵ではないにしても、目の前に立たれるまで気づかないとは···自分自身が情けなかった。
エージェント時代に、いかに目の前のことに対して、意識的に視野を狭めてきたかということだ。
「ああ···すまない。」
「あれだけ神威術を何度も使ったのだ。何か欲しい物があれば、手配するから言ってくれ。」
「優しいんだな。」
「···それはこっちのセリフだろう。エルフや私達に危険が及ばないように配慮してくれたのだろう?」
馬車で移動をしていた場合、この教会にたどり着くまでには2~3日はかかる。
その間に、ヘイド王国の兵士に追われた場合、全員が無事でいられるかは難しいところだ。
「···頼みがある。」
「何だ?」
「ジルの胸の谷間が見えて目のやり場に困るから、前屈みはやめて欲しい。」
「「··························。」」
バシッ!
「痛っ!」
「はあ、もう!台無しね。」
「やはりテトリアの···いや、今のはジルが悪いのか?」
「え!?私?」
「タイガは直視していなかった。無防備なジルが悪い。」
「なんでよっ!?」
2人の言い争いが始まったが、おかげで胸のつかえが取れた気がした。
俺は再び目を閉じ、意識を手放した。
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