第二章 亜人の国 「魔王の鉄槌③」
「う···。」
「うぷっ···。」
ラピカとジルを伴って、ヘイド王国に転移した。
大した距離ではないのだが、初めての2人には、嘔吐感がハンパではないようだ。
出発する前に、転移術について話をすると、2人が揃って目を見張り、いきなり謝罪をされた。
「それって神威術!?」
「まさか···神格化しているのか!?」
ミリネの説明不足が原因なのかもしれないが、ずっとテトリアと同一視され、クズ野郎的な目で見られていたのに現金なものだ。
「一応、亜神である」ということを話すと、急に挙動不審となり、それまでの非礼を詫びだしたのだ。
「大丈夫だ。どうせ魔王だし。テトリアと根源が同じだし。」
と、ぼそぼそっと話すと、顔に焦燥感が丸出しになっていた。
そそっかしいと言うか、短絡的なのはテトリアの血を引いている証拠なのかもしれない。
テトリアは、神格化までしていなかった。最近では、その人間性が原因だったのではないかと思っている。
ついでなので、メンタルが弱った2人に、「転移中にはぐれたらヤバいから、しっかりと抱きついておいた方が良い。」と真顔で注意喚起をしておいた。
やわらかくて良い香りがする女体の感触を、さりげなく楽しんだのは言うまでもない。
もちろん、下心など微塵もないかのように振る舞うのを忘れない。
孫とか娘という思いはどうした?と言われそうだが、俺には何の記憶もございません。
···黙れ、下郎。
転移術は危険だからな。肩や脇腹をしっかりとホールドしただけだ。
手がワキワキと動きだそうとしたのは、理性で止めてある。
さておき、転移した先は、あの教会の中だった。
「おおっ!?タイガ殿、ラピカ殿にジル殿も···。」
そこで待機をしていたらしいデュークに声をかけられるが、リバースしそうになっている2人を見て絶句している。
「何か···2人にしたのですか?」
パウロが俺に咎めるような目を向けてきたが、「転移の副作用だ。」と言うと、固い表情で「孕ませたのかと思いました···。」と小さくつぶやかれた。
コイツには教育的指導を施した方が良いのかもしれない。イケメンなのに、頭の中がお花畑としか思えなかった。
「ひどい目にあった···。」
「いつも、あんな思いをしながら転移術を使っているの?」
ある程度は回復したのだろうが、涙目でそんなことを言うラピカとジルに、俺は真顔で答えておいた。
「神威術だからな。代償なしで自在に使えるなんてことはない。苦行の一貫だと思って耐えている。」
適当に高尚なことを言っておいたのだが、2人にはなぜか尊敬の目差しで見られた。
極端だな、おい···。
何にしても誤解は解けたようで、それ以後の俺への態度は、好意的なものに変わったのだった。
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