第二章 亜人の国 「魔王降臨⑯」
「そ···そうなのか···確かに、人生観が変わる経験じゃったが···。わらわには、ちと···怖すぎるでな。」
涙眼でそう語る大聖女ミリネを見て、やはりやりすぎだっただろうかと考えてしまった。
「でも、爺様の気づかいは、わらわを思ってのことであろう。その気持ちには感謝をするのじゃ。」
そう話すミリネの笑顔を見て、『ああ、やっぱりこの娘は善意の存在か···やってしまった···。』と、自分がやった仕打ちに後悔をしつつ、ひとつのキーワードに気がついた。
「爺様?」
「そうじゃよ。」
「···誰が?」
思わず敬語も飛んでしまった。
エージェントとして、ここまで意味が解読できない会話は、これまでにそうはなかった。
ちょっとした混乱に陥っていると、ミリネはすっと人差し指を伸ばし、俺を差している。
「爺様じゃ。」
「·················。」
そっと後ろを振り返る。
誰もいない。
しかし、ミリネの指は真っ直ぐに俺に向けられていた。
「なんじゃ?気づいておらなんだか。」
「何がだ?」
「爺様は爺様じゃ。容姿はだいぶ変わっておったが、わらわにはすぐにわかったぞ。」
あかん···意味がわからん。
この見た目幼女は、何を言っているんだ?
「根源を見れば、爺様とそっくりなのじゃ。」
腕を組み、得意気ににんまりとするミリネだが、やはり成層圏のダイブで頭のネジが何本か外れてしまったのだろうか?
「根源というのは?」
「根源は根源じゃ。テトリア爺様と同じものだのう。」
「···今、テトリアと言ったか?」
「そうじゃ。テトリア爺様は、わらわの爺様じゃ。」
「テトリアの孫なのか!?」
「そうじゃよ。だから、爺様と呼んでおるのじゃ。」
「それは···爺様というあだ名ではないのか?」
「違うぞ。本当の爺様じゃ。」
···何となく意味を理解した俺は、絶句するしかなかった。
「テトリア爺様は別の大陸で余生を送っておったのじゃがな、そちらでの生活が窮屈だからと、転移してこの大陸を度々訪れておったのじゃ。」
「それで···こちらでも所帯を持ったと?」
「まあ、そういうことじゃな。もちろん、わらわだけではない。他にも同じ血統の者はおるぞ。」
「···マジか。」
「マジじゃ。」
あの野郎。
こちらでもハーレムとか···うらや···ふざけんじゃねぇよ。
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