第二章 亜人の国 「魔王降臨⑧」
「なぜ、神聖ユラクト興国の神官であると思われるのですかな?」
デュークはおもしろがるような表情で聞いてきた。
「この国の人間にしては、顔色も装いも良すぎる。わざと偽装している可能性も捨てきれないが、もともと宗教や信仰が途絶えたような国だ。となると、他国···一番可能性があるのは北に位置する宗教国家、神聖ユラクト興国の神官である可能性が高い。それと、それが間違いでなければ、その教えにそっている。獣人に対して偏見ではなく、好意的な意識···どちらかというと、高い好感度を感じるパウロの態度や言動から、そう感じられた。」
「ふむ。確かにそうかもしれませんな。しかし、近況で考えれば、ウェルズ公国も現公王陛下が、他人種に対する迫害を禁止していると聞きます。そちらである可能性もあるのではないですかな?」
前公王とは異なり、イリーナは人族以外の人種にも人権を認めているそうだ。理由は人情的なものと言うよりも、その者たちにもひとしく職に従事してもらい、税を課したいというものらしいが。
「ウェルズ公国は···いや、公王イリーナは、合理主義の人物だ。宗教の必要性は感じているだろうが、他国···しかもヘイド王国に神官を派遣することになど、何の利も感じないだろう。むしろ、両国の関係を悪化させる要因にもなるとして、教会にそのような行動を取らせるとは思えない。」
「公王陛下をご存知のような発言ですな。」
「実際にご存知だからな。それよりも、敵対する気がないのであれば、もう少し生産的な話をしたいものだが?」
「生産的な話···ですか?」
「そちらも、そう望んで俺に接触してきたのではないのか?」
「···あなたの正体を知りませんが?」
真顔で惚けた言葉を吐いている。腹の探りあいと言うよりも、こちらを試している気配すらあった。
「ある程度、目星がついているのではないのか?」
「ふむ···では、お聞きしましょう。最近、この大陸で相当な影響力を持った人物が暗躍しています。黒髪黒眼で長身痩躯の容姿、それに人とは思えない術で各地を転々としていると。」
「俺が魔王だ。」
「···は?」
デュークは遠回しに俺の正体を掴もうとしているようだったが、そんな時間のかかるような真似は必要ないと判断した。
ヘイド王国に入ってからの俺の動きも、すべてではないにしても掴んでいる可能性が高い。
ヘイド王国に何名の暗部を忍び込ませているのかはわからないが、この街に入ってからそれほど時間が経過していないにも関わらず、俺に接触してきたのだ。要所要所の情報網が機能しているとみるべきだろう。
「確証はないが、可能性は高いと思っての接触だろ?ならば、お互いに余計な時間を使う必要はないだろう。」
「わかりました。いや、驚きですね。そんなにあっさりと認めるとは···。」
「逆に不審を感じるかもしれないな。証拠を見せよう。」
俺は空間収納から蒼龍を出した。
「「!」」
続けて瞬間移動を使い、デュークの背後を取った。
「···今のは?」
パウロは絶句していたが、デュークは驚いた表情をしながらも、質問をしてくる。
「神威術だ。2つ名として魔王と呼ばれているが、存在は亜神だからな。」
自分でもあまり信じていないことではあるが、これまでの経緯を考えると、そうなのだろう。
回りくどいことを嫌い、利用できるものは利用していくべきだと結論づけた。
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