第二章 亜人の国 「魔王降臨⑦」
「あなたは一体、何者なのですか?」
壮年の方はデューク、若い方はパウロと名乗っていた。本名かどうかは微妙なところだ。
「その前に、聞きたいことがある。あんたらは、亜人のことをどう思っている。」
一瞬、パウロが顔をしかめた。
こいつらもか···と、苦笑いをしそうになったが、俺の聞き方が不味かったらしい。
「看過できないので言わせていただきますが、亜人という言葉は使わない方が良いですよ。あれは蔑称です。彼らにはエルフをはじめ、多種多様な獣人もいます。特に獣人は可愛らしい兎人族から、勇ましい獅子族など、それぞれに特徴を備えているのです。あの···。」
なんだコイツ。
口調は淡々としているが、目つきがヤバい。
「特に、人族よりも高めの体温の包容力はすばらしく、種によっては毛なみは滑らかで触るだけで···。」
獣人が好きなのか?
いや、ただの変態か!?
「パウロ、その辺にしとくのだ。」
「まるで昇天···あ、はい。申し訳ありません。つい熱弁を···。」
昇天て···。
「·······················。」
「すまないな。彼は獣人に憧れを持っていて、妻にするならば、その中でも兎人族と決めているそうだ。」
何かの冗談やまやかしか?
いや···デュークはともかく、先程のパウロの目は完全にイッちゃってる系だ。
おそらく本音だろう。
「いきなりで驚いた。獣人を奴隷にして、愛でたいとでも思っているのかと···。」
「奴隷ですとーっ!そんなものは断じて許す訳にはいきません!!そもそも、あの愛らしい···。」
また、地雷を踏んでしまったようだ。
デュークも額に手をやりながら、首を振っている。よくある発作みたいなものかもしれない。
率直な感想だが、異世界には変人が多いようだ。
「もしかして、神聖ユラクト興国の神官なのか?」
ちょっとした情報とパウロの反応から推察し、そんなことを言ってみた。
パウロの饒舌だった口が止まり、デュークはパウロに向けて呆れたような視線をやっている。
これらが演技なら相当なものなのだが、彼らは自分たちのことを偽るつもりはないのかもしれないとも思えた。
「そうか···神聖ユラクト興国に関しての噂は、それほど間違った内容ではないということか。」
神聖ユラクト興国。
国教でもあるユラクト教会が国民を主導している国。その教えには、人種差別が大罪であることや、あらゆる種族は神の創造たる産物であり、常に平等であるべきだとうたっているらしい。
その教えだけを見れば、亜人と呼ばれる人族以外の種族にとっては住みやすそうな国に思える。
しかし、実情は少し違うらしい。
人族と他種族の意識には、この国でもやはり深い溝があり、それぞれに居住区を隔てているとのことだ。
ただ、一般の者がそうであっても、敬虔な神官たちは教えにそって種族の違いを問題にすることなく、同じ目を向けているのかもしれない。
まあ、パウロの反応は少し···いや、かなり歪な感じが否めないのではあるが···。
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