第二章 亜人の国 「魔王降臨⑤」
情報収集には進展がなかった。
街を歩き回り、様々な店に入って聞き込みをするが、何も知らないと言うよりは、頑なにその内容には触れたくないといった態度で返される。
ついでに言えば、街に活気はない。
街中に人は出歩いているのだが、必要最小限の買い物を済ますだけで、娯楽関連の施設や笑顔というものに遭遇することはなかった。見る人見る人全員が顔色も悪く、うつむき加減で歩いている。
相手の目を見て話す人は、全体の1割くらいだろうか。やはり、普通ではない。
兵士などが、「怪しい奴め!」とやってくるかという淡い期待もあったのだが、そちらもあてが外れてしまったようで、街中を巡回しているような兵士などは皆無だった。
こうなったら兵士の詰め所にでも押し掛けて、無理矢理にでも情報を引き出してやろうかと、強引な手段を考えていると、前からやって来た人物と目が合った。
「失礼。国境を越えて来た商人殿ですか?」
20歳そこそこの若さに見えるが、その装いのせいか落ち着いて見える。気品もあり、きれいな身なりをしている。この街の住人を見る限り、「おまえこそ余所者だろう。」とツッコみたいくらい浮いている。
「そうですけど、神官様が何か御用ですか?」
「少しお話があるのですが···今から教会の方に足を運んではいただけませんか?」
「教会?どこの?」
「すぐ近くです。」
そう言って、この若い神官は、斜め後ろの方に手をかざした。
確かにすぐ近くに教会がある。
ただ···朽ち果てる一歩手前に見えるのはなぜだろうか。
どう考えても、この神官があの教会の主とは思えない。
しかし、この国に来てからのファーストアプローチである。ソート·ジャッジメントが反応しているわけでもないので、誘いにのってみることにした。
「神官様の誘いを断るのも後味悪いし、行きましょか。」
「···先程から思っていましたが、珍しい言葉づかいをされますね。どちらのご出身ですか?」
「水の都、大阪ですわ。」
「オーサカ···ですか?初めて聞きました。」
でしょうね。
「大阪を知らん?まさか東京は知ってるとか?」
「いえ···どちらも知りません。何と言う国ですか?」
「ニッポンです。」
「は?イッポン···ですか?」
「まあ、そんな感じやわ。」
「はあ···やはり知りませんね···。」
うん、逆に知っていたら怖いわ。
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