第二章 亜人の国 「魔王降臨③」
「それはダークエルフの知識のようだ。」
ヘイド王国の薬物についてのガイの回答だ。
ウェルズ公国から、一度アースガルズの王城に戻り、協議の合間に確認をしてみた。
余談だが、先にアグラレスに確認をしようかと思ったのだが、エルフの森の位置がはっきりとイメージできず、転移に失敗している。
おそらく、エルフの森は独自の隠蔽が施されており、転移術では直接移動することが叶わないのだろう。
このあたりは精霊神であるアグラレスに同格か、それ以下での神威術では力及ばずといったところなのかもしれない。
「物騒な知識を持っているのだな。」
「確かにな。だが、元々は生きるための術の副産物だ。俺たちは森に生きているから、高山の動植物の知識はないが、薬物の生成については知見がある。はるか昔に散会した同胞が高山で暮らしているのであれば、その地域独自の薬物生成を行っていても不思議には思わない。」
「そうか···。」
「同胞が絡むのであれば、俺も一緒に行かせてはもらえないだろうか?」
この生真面目なダークエルフは、心底良い奴だった。
なぜこんな善人が過去の同族の過ちで冷遇され、ババ色が似合う奴らがふんぞり返っているのか、意味がわからない。
「そうだな。今はまだ情報だけで確証がない。調査が進んだら、その時にお願いする。」
「···そうか、わかった。」
今回は荒事になる予感があった。
ガイやミン達には、あまり手を汚して欲しくはない。
彼らは俺にとって大事な友人で、これ以上の人種間の軋轢は作ってもらいたくはないのだ。
汚れ役は魔王こそ相応しい。
そして俺の手は、すでに拭いされないほどの血で染まっているのだから。
カリスから補充すべき物資をもらい、再びウェルズ公国に転移する。
公王イリーナから、辺境付近の地図と情報を受け取り、街で細々とした買い物と、睡眠を確保する。
ヘイド王国は、あまり他国に実態が知られていない。辺境から国境を越えて、情報収集をする必要があった。
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