第二章 亜人の国 「共生④」
「今から話す事を信じて欲しいとは言いません。だが、私が実際に経験し、直面してきたことばかりです。」
敬語で話すには理由があった。
国のトップがいるのだ。不用意に礼節を失するような真似はしないほうが良い。人とは、心証1つで相手を良くも悪くも思う生き物なのだ。
「かつて、堕神シュテインの脅威を退けたのが誰かはご存知でしょうか?」
「無論だ···希代の英雄と呼ばれたテトリアの活躍で人間は救われたと、どの書物にも書かれている。」
目があった王太子セインが答えた。
別の大陸での出来事ではあるが、世界を揺るがしかねない戦いであったため、吟遊詩人や学者などがその内容を全世界に広めたと言われている。
今日では、御伽噺のように扱われ、学校教育などでも使われている。国教などの違いにより、この国では神アトレイクは表だっては出てこないが、そこはそれほど重要ではなかった。
「実は、テトリアは復活していました。」
「「「「「!」」」」」
協議の席である。
俺が何を話し出すのかと不思議そうな顔をする者もいたが、テトリア復活について話し始めると、全員が無言で俺を注視し、耳を傾けた。
自分が知る知識を、可能な限り簡略化して話を進める。
異世界から転移···いや、召喚されたと言うべき俺と、テトリアとの関係。
これまでの経緯。
誰も言葉を発っさず、疑念の表情も浮かべない。
そして、俺が話終えると、全員が息をついた。
「信じる信じないは自由です。だが、堕神シュテインと魔族の脅威は無視して良いものじゃない。」
場は重苦しい雰囲気となり、誰もが発言することをはばかるような空気が流れていた。
「私個人の戦力など、数で多方面から攻めこまれれば無意味なものです。しかし、イレギュラーな存在としては機能することができます。」
転移術を使えば、伝令やピンポイント支援など、戦術の幅は格段に広がる。この国だけではなく、各国が対魔族のために意を同じにするのであれば、厳しい状況に変わりはないだろうが、救われる命を増やすことはできるはずだった。
「タイガが魔王の2つ名を得たのは、それが理由だったのね···。」
ミーキュアが納得したという顔をした。俺の2つ名をスキルで見た張本人だ。
「だから、人種間の差別や偏見を排除するために···亜神であるタイガが魔王となり、魔族からの脅威に立ち向かえる体制が構築できるようにということね。」
ミンが継いだ内容は、おそらくは正しい。
テトリア亡き今、神アトレイクがこの大陸で俺に課せたミッション。
対魔族のための対抗戦力の構築。
「協議に関しては、今の話を含めた今後の在り方も考慮してもらえるとありがたい。積極的な戦いを想定する必要はない。自分たちの生活に迫る脅威からの防衛策を考えることに集中してもらえれば良い。」
あとは、当事者同士が詳細を煮詰めていけば良かった。
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