第二章 亜人の国 「共生②」
協議の日がやってきた。
登城したのは俺とミン、ミーキュアにイリヤ、カリス、そしてガイの総勢6名である。
メンバーの選定においては、可能な限り多種族であることを念頭に置いていたが、ダークエルフとしてガイの参加は必然だと言えた。
人族との確執は、どの種族でも持ち合わせている。しかし、歴史的な背景を考えれば、ダークエルフという存在は、これを機に正しい方向に持っていかなければならない。
「俺たちは、他の種族とは違う。タイガ達の重荷になるのは明白だ。」
ガイは協議への参加には消極的だった。
「良い機会だ。逆に、その確執が取り除けるのであれば、こちら側としてもこの国を信じるに値すると判断ができる。」
「···すまない。おまえに会えて良かったよ。」
「まだ始まったばかりだ。だが、ミンは公正に見る。協力してあげて欲しい。」
俺はガイの肩を軽く叩いた。
「勇者マイクは洗いざらい吐いたよ。フェミリウム公爵は拘束されて、取り調べを受けている。」
待合室で待機していると、トゥーラン隊長が訪れて説明をしてくれた。
「公爵はどうなる?」
「さあ···な。公爵が罪に問われるというのは前例がないが、今回は言い逃れもできないだろうし、陛下との仲も良好ではないからな。軽くて除爵、最悪の場合は極刑もありえる。」
まあ、無難なところだろう。
「宮廷魔法士は?」
「彼らは···あんたに判断を委ねるそうだ。」
「なぜ?」
「国を思うが故での蛮行だ。忠誠心がなくなった訳ではないからな。」
宮廷魔法士は、その才能や立場を考える上で、国にとって重要な人材である。明らかな犯罪行為や、反逆ではないと考えられる今回の事案では、国王や宰相も処断しにくいのであろう。
下手に罪に問えば、宮廷魔法士全体の士気や忠誠心に悪影響が出るのは確実だ。
「だったら、無罪で良いと思うぞ。」
「···良いのか?」
トゥーランだけでなく、ガイ達も意外な顔をしている。
「あの程度で命を狙われたなどとは思っていないからな。実害もなかったし。」
「····································。」
「ああ、ルービーの冒険者がヘカトンケイルにビビっていたな。彼らは人族じゃない。その辺りも頭の片隅に入れて、協議をしてくれれば良い。」
暗に、貸しが1つできたと仄めかした。
「···わかった。その旨は、陛下達にお伝えする。」
「あと、宮廷魔法士のオッサンにも伝えて欲しいことがある。」
「···なんだ?」
「禁術の意味がわかっているなら、2度と使わないように言って欲しい。無関係な人間に被害が出たら、さすがにキレるぞと。」
「···必ず伝える。」
トゥーラン隊長は、顔を蒼白にさせて部屋を出て行った。
「タイガって、そういう人?」
今まで静かにしていたイリヤが聞いてきた。
「そういうって?」
「ほら、人族の中にある組織···えーと、ブラックと言うか、反社会的と言うか···非合法な?」
言葉的に間違ってはいないが、イリヤが言いたい『そういう』って言うのは、おそらくマフィアの類いのことだろう。
「···違うぞ。」
「そう···交渉の中に、威圧がふんだんに入っていた気がしたから····。」
「イリヤ、タイガは魔王だから。」
「あ、そっか。」
ミンの一言でイリヤは納得したようだ。
俺は納得できなかったが···。
魔王=ヤカラか?
おもしろい!早く続きが読みたい!と思っていただければ、広告を挟んだ下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけるとモチベーションが上がります。
よろしくお願いしますm(_ _)m




