第二章 亜人の国 「共生①」
王都に戻ってきた。
デューナとはルービーで別れ、宮廷魔法士たちについては、勇者マイクと共に別の馬車で移送されることになった。
今ごろは、王城で近衛親衛隊による取り調べを受けていることだろう。
「ミンが代表として、協議に参加をするのか。」
俺たちはサブリナの好意で、クランハウスに間借りをしていた。
「そう。本来は各種族の長たちも同席した方が良かったかもしれない。でも、今の段階ではまだ無理だから。」
積年のわだかまりは、すぐに解消されるものではない。
今は、冷静に対応ができるメンバーが、協議の席に着くべきだろう。それに、ミンのスキルは自分に向けられると脅威だと思う者が多いが、味方として交渉の席に立ってくれると考えれば、文句を言う奴も少ないはずだ。
「僕も登城するよ。」
「カリス···目的はなんだ?」
「ああ、その眼差しは傷つくなぁ。僕は君が嫌がることはしないよ。もう少し、信用してくれても良いんじゃない?」
「そういうつもりじゃない。自発的に動くのが不思議だと思ってな。」
カリスは知的好奇心や探求心の塊だ。好んで煩わしい政の席に立つのが、不自然に思えた。
「この国は歴史的な書物を数多く所蔵しているからね。城内の限られた人しか入れない書物庫を見てみたい。」
「···ふむ。ちょうど良いかもな。」
「何が?」
「王都の有事の際に、魔神であるカリスが守護役になるから、その代わりに書物庫の出入りを自由にさせてもらえないか交渉できないかと思ってな。」
「だったら、専用の研究室も欲しい。」
「わかった。協議の前に王太子に話しておく。」
こういった事は、事前の根回しがものを言う。信用されているかどうかは別として、有事の際に魔神が王都を守ってくれるというのは魅力的な提案だろう。
「ドワーフの職人も入れたいとこだね。」
···王城内に本格的な研究開発工房を作ろうとしていないか?
「その辺りはおいおいだな。」
「そうだね。決済者を調べてから、精神干渉で言うことを聞かせたら良いか。」
「いや、ダメだろ。」
「え、ダメなの?」
「···より良い環境を長く確保したいのなら、不信感を持たれないようにした方が良い。」
「え~、面倒だな。」
「ドワーフにも精神干渉を使ったのか?」
「使わないよ。職人として劣化するもん。」
「じゃあ、それと同じだ。どんな奴でも、時に斬新なアイデアを閃いたり、何かのヒントをくれたりするものだ。だから感性は大事にしないといけない。」
「···なるほど。そういうものか。」
「互いに好意的であれば、持てる力以上のものが出せたりするからな。」
「おおーっ。」
カリスは子供のようなものだ。
自分に利がある事を諭せれば、意外に素直に聞いてくれたりする。
「そうかぁ。タイガは僕に好意を持っているから、より良い環境を構築してくれようとするんだね。」
「まあな。」
「じゃあ、今夜あたりいっとく?」
「···何を?」
「夜伽。」
いらん。
事あるごとに誘惑するんじゃねえよ。
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