第二章 亜人の国 「動乱①」
王国騎士団のフェミリウム将軍の派閥下にある将校たちも、今回のクーデターに疑問を持つ者は少なくはなかった。
なぜ今のタイミングで?
軍事的にも強国に囲まれ、魔物が蔓延る魔の森を背後に持つ王国にとって、短絡的な内乱は隣国群につけいる隙を与えることとなる。
それ故に、軍事力で支配するクーデターは、綿密な計画の上での実施となる予定であった。
しかし、突然の将軍の大号令により、王城を占拠するという大胆な行動が発起されるに至った。
城内の動きに敏い者であれば、その発端が王太子セインと近衛親衛隊長の不在、そして亜人との協議の目処が立った今だからこそと思う者もいる。
しかし、それにしても突然の事態である。
「将軍閣下は、どこぞの国と独自に交渉でも持ったのだろうか?」
他国の後ろ楯があれば、今回のような急変も頷けないこともない。
ただし、あのプライドの高いフェミリウム将軍が、他国と対等ではない関係を築けたりするものであろうか。
クーデターに対して他国の後ろ楯を持つということは、事後において対等な関係を築くということは困難を極める。
しかも、数ヵ国と接する王国の立地を考慮すると、後ろ楯となる国は一国だけというわけにはいかない。
近隣諸国は互いに牽制しあっている。
軍事力で均衡する隣国群数ヵ国と交渉を持つなど、可能であるとは思えない。
「将軍の乱心でなければ良いのだが···。」
ある将校は、自らの担当である場を制圧しながらも、先行き不安な思いにかられるのであった。
「魔王と···魔神の力を恐れたか?」
将軍が反旗を翻したタイミングを考えると、国王が思い及ぶ事象はそれしかなかった。
「恐れる?魔王や魔神など、私の敵ではない。」
異常なまでの自信をその表情に浮かべたフェミリウム将軍は、国王の言葉に異を唱える。
「聞かせろ。そなたがこのような暴挙に及んだ理由は何だ?」
将軍や将校たちに剣を向けられた国王ではあったが、冷静に状況を見極め、活路を見いだそうとする。
国王という立場である以上、武力による脅しになど屈する訳にはいかない。
種族の問題を棚上げにしていたとは言え、国主である。そして、国の将来を託せる後継者と、魔族の脅威をものともしない協力者を得た今となっては、自身の命など礎になればそれで良いとも感じている。
「武力だけで安寧を得られると考えている愚か者の思想とやらを、聞こうではないか。」
だが、その毅然とした態度が、謀反を企てた者の最後の理性を奪うこととなるとは、皮肉なものであった。
「愚王よ。貴様の時代は幕を閉じる。潔く散れ。」
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