第二章 亜人の国 「変革⑲」
ヘカトンケイルが姿を現した。
シチュエーションとしては、怪獣映画の登場シーンといったところだが、リアルなので臨場感がハンパではない。
ヘカトンケイルを見るに、以前に倒した個体に間違いはないらしい。
頭部の損傷や、ナパームで焼かれた胸が爛れている。俺の攻撃の痕だ。
ただし、全身が腐敗している。
やはりアンデッド化しているようだった。
「毎度おおきに。」
WCFTー01。
後方にいる奴らは、すぐには動かないだろう。下手なタイミングで介入をすれば、自分達もヘカトンケイルの餌食になりかねないからだ。
腰だめにしたWCFTー01のトリガーを引き絞る。
「魔石の残りは少ないが、ここで出し惜しみはできないからな。」
火属性最大火力。
青い炎がすぐに線状にのび、ヘカトンケイルの鳩尾あたりをとらえる。
ノズルをゆっくりと動かし、全身に行き渡るように、レーザーのように放出される炎をヘカトンケイルに浴びせ続けた。
超高熱の炎が腐敗した体を焼き、まるで砂糖が溶けるかのように液状と化して、やがて蒸発していく。
周囲に漂う臭気は、吐き気をもよおすほどの悪臭ではあったが、風上にいるこちら側は、我慢できないほどのものではない。
数分後、地面の染みと化したヘカトンケイルから視線を動かし、後方から姿を現した者達を見た。
「ヘカトンケイルを消滅させるとは···。」
身なりの良い魔法士達。
全員が制服のようなローブを着用し、胸元には王国の紋章が金糸で刺繍されていた。
「宮廷魔法士かな?」
「そうだ。」
「ヘカトンケイルのアンデッド化は、あんたらが?」
「禁術だ。適正のある魔石を死体に埋め込み、遠隔で操った。」
「ゴーレムのようなものか?」
「属性は違うが、似たようなものだ。」
宮廷魔法士たちは無表情ではあるが、いずれもこめかみから汗を流している。
「ヘカトンケイルの操作で疲れたのか?それとも、初見の魔道具を見て驚いているのか?」
疲弊した顔をした魔法士たちは、別の緊張をはらんでいる。
「今世の魔王が、王国を支配しようと目論んでいると聞いた。我々はそれを阻止するつもりだ。」
その言葉と同時に、俺の周囲に魔力の柱が立ち上がった。
乳白色の光の柱。
初めて見る魔法だが、俺を取り囲んだ4本の柱から幕のようなものが広がり、それぞれに結び付いていく。
四方を光の壁で囲まれた。
結界のようなものかもしれないが、それだけでは終わらないだろう。
「将軍からの刺客か?それとも、情報に踊らされて、自主的に排除に動いたのかな?」
「························。」
無言。
交渉の余地はなさそうだ。
「やめるのだ!彼は敵ではない!!」
渓谷の上からセインが叫んでいるが、その間にも周囲を取り囲んだ光の壁は、さらに発光を強くしていった。
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