第二章 亜人の国 「変革⑬」
「ヘカトンケイルが復活したということか?」
頭部、しかも脳を完全に破壊したはずだが、あの渓谷にはまだヘカトンケイルが存在するというのだ。
別の個体か、それとも···。
「復活かどうかは知らん。そもそも、本当に倒したのかどうかも、わからないからな。」
喧嘩腰と言うわけではないが、確実に疑いの眼差しをされている。
「えらく殺気立っているが、誰かがそのヘカトンケイルの犠牲にでもなったのか?」
「そうだ。ヘカトンケイルが倒されたと聞いて、未踏の魔の森探索の依頼が出された。それを受けた冒険者の何人かが、命からがらで逃げ帰ってくるはめになったんだよ。」
ん?
それって···。
「誰かが命を落とした訳じゃないのか?」
「誰も死んでねぇ。」
「大ケガしたとか?」
「心に恐怖という傷を負った。」
おお、カッコいいセリフだな。
というか、犠牲者もいないし、コイツらが殺気立つ意味がわからん。
「それで、なぜ殺気立っている?」
「あたりまえだろうが!下手をすれば、ヘカトンケイルに殺されるところだったんだぞ!!」
いや···誰も死んでいないし、ケガ人すらいないのだろう?
心に恐怖という傷?
バカじゃないのか。
「要するに、ヘカトンケイルが倒されたと聞いて、未踏の地に喜び勇んで向かったら、ヘカトンケイルらしき魔物がいたからビビって帰ってきた。それで文句を言いたいってことか?」
「そうだ!」
···頭イタイ冒険者か。
「じゃあ、一緒に行こうか?もしヘカトンケイルがまだいるなら、何度でも倒してやるよ。」
「······························。」
おい、虎人よ。
何を黙っている。
「なあ、一緒に行こうぜ。」
俺が虎人の肩を触ろうとすると、ビクッと体を震えさせながら、一歩引きやがった。
なんだ、ヘカトンケイルが怖いのか。
それで良いのか、虎人よ。
さっきの殺気は何だったのだ?
いや、これはシャレではないぞ。
さっきの殺気···。
忘れてくれ。
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