第二章 亜人の国 「変革⑫」
「ギルマスと話がしたい。」
エルミアが冒険者ギルドの受付に話しかけた。
ルービーで顔がきくのは、同行していた中ではエルミアとサブリナくらいのものだ。
人族が面識のない者に話しかけたところで、無視をされるか、睨まれるのが関の山らしい。
「ああ、エルミアさん。久しぶりで···。」
受付にいた猫人族の女性は、エルミアを見て笑顔で応えかけたが、一緒にいる俺たちを見て、言葉を止めてしまっていた。
「ああ、大丈夫よ。この人達は私の知り合いだから。変な意識は持っていないし。」
「そ、そうですか。ギルマスに御用でしたね?すぐに確認をしてきます。」
受付嬢は、慌てたように奥へと向かっていった。
時間帯のせいか、ギルド内はあまり混み合ってはいないが、突き刺さるようは視線ばかりだ。
目があった瞬間に、睨み返してくる奴も多い。
そんな殺伐とした雰囲気の中で、1人の虎人が声をかけてきた。
「よお、ちょうど良かった。聞きたいことがあるんだよ。」
たまたま目があった俺に向かって話をしているようだ。
「聞きたいこと?」
「ああ。少し前に、魔の森との境界にいたヘカトンケイルを、人族が倒したって聞いたんだがよ。そのことは知っているか?」
「ああ。知っている。」
「だろうな。エルクの娘がそいつと一緒に行動をしているって聞いたんだが、あんたらの中にそいつはいるのか?」
エルクとは、エルミアの父親の名前だ。
エルミアが一緒にいることを見て、話を振ってきたのだろう。
「それは、たぶん俺のことだな。」
「はあ?あんたが?」
値踏みをするように、ジロジロと見られた。
「何か?」
「ヘカトンケイルを倒したっていうのは本当なのか?」
「そうだが。それがどうかしたのか?」
そう答えた瞬間に、周りが殺気立った。
目の前にいる虎人からは、周囲を圧倒するほど濃厚な殺気が漏れている。
そして、その口から出た言葉は、予想外のものだった。
「だから人族は信用できねぇだよ。ヘカトンケイルは、まだあの渓谷にいるぞ。」
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