第二章 亜人の国 「変革⑦」
「まさか···本当にフェミリウム公爵が···。」
公爵とは、王家の血筋。いわば、セインとは身内である。
だが、王位継承に関して言えば、骨肉の争いや、権力闘争が巻き起こるのが必然である。
セインやリーナは、それをわかっていながらもショックの色を隠せない。それだけ、2人の人間性がまともということなのかもしれないが、立場からすると、ただの甘さが際立ってしまう。
「相手の中に手練れがいる。俺が出ます。」
「タイガ殿···。」
俺は他の馬車に乗り合わせている同行者に事情を話し、ここでの待機と周辺警戒を依頼した。
ここにいる者達のほとんどは、セインやリーナの護衛である。だからこそ、別口で魔族が襲ってくる可能性を示唆した。
俺が初めてセインと出会った時に出くわした魔族の言葉を考えれば、あれは偶発的なものではないと言える。このタイミングで来るかはわからないが、警戒を強めさせる必然性を感じていた。
敵のいる場所まで移動をすると、見知った顔が並んでいた。
「魔王というのは、名うての詐欺師なのか?まんまと騙されてしまったよ。」
これまでとは違う剣呑とした口調で話しながら、キザったらしく頭を撫でるのは、勇者マイクだった。
「くっ···頭が光ってまぶしいぞ。」
わざとらしく顔をしかめると、マイクは怒りをあらわにした。
「誰のせいでこんなに光ってると思っている!全部、貴様の嘘のせいだろうが!?」
「頭を剃ると毛根が復活するのは本当の話だ。それに、俺が剃れと言った訳じゃない。」
「ふざけるなっ!貴様の···。」
「マイク、不毛なやり取りはやめなさい。」
髪はないが、怒髪天を衝く勢いで捲し立てようとしたマイクを止めたのは、後ろに控えていた女性の内の1人だ。
「ふ、不毛だとっ!?」
確かに毛がないから、この場に最も相応しい言葉と言えよう。
「四席である貴様が、我々に口答えをするのか?」
「あ···いや···。」
マイクは意気消沈した。
「ただのメイドではないと思っていたが、もしかして、あんたらは国の暗部か?」
マイクの傍に立つ3人は、この場では違和感しかないメイド服を着ていた。
そう、あいつらだ。
俺に猥褻を働こうとした、"おかめ"、"般若"、"なまはげ"の冥土三人衆。
ただ者ではないとは思っていたが···くっ、こいつら···また俺のケツを触る気か!?
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