第二章 亜人の国 「変革②」
王太子セインの放った言葉は、王国側からすれば物議を呼ぶ内容だ。
国王と宰相が、揃って苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「さすがは殿下。今の言葉がなければ、私はすぐにこの部屋を出る所でした。」
「タイガ殿···。」
これまで、亜人蔑視の体制を変えることなく放置してきた国だ。
細かい内情はどうあれ、一方的に都合の良い解釈をされるのは愚かすぎる。
国王からしてみれば、亜人や魔王にすがりたくても、媚びる訳にはいかない立場もあるだろう。
だが、それは人族以外の存在を軽視し、さらに心情を無視した身勝手でしかない。
「私が正義の女神に寵愛をされていると言われましたが、陛下や閣下は正義とは何だとお考えでしょうか?」
「それは···。」
言葉が続かない。
余計な事を言えば、自らの立場···国の救済が頓挫することは理解しているのだ。
「アストライアー様の正義は、人間を信じることですよね?」
リーナだ。
彼女も兄と同じく理解をしている。
「そう···そして人間とは、人族だけを指すわけじゃない。」
言外に、人族だけの味方をする気はないと告げた。
国王と宰相の表情がさらに強ばる。
「良い機会だと思います。今後、どうすれば共存していけるか、顔を合わせて協議をされてみてはいかがでしょうか?」
「···タイガ殿の今の言い回しですと、協議をする相手はあなたではないのでしょうか?」
王太子も驚いた顔をしている。
「これまでにもお伝えしたように、私は元々人族です。仲介はしますが、実際に互いの立場から率直な意見を言い合った方が良いでしょう。」
「それは、確かにその通りかと。しかし、魔族のことを考えると、あまり悠長なことも言ってはいられないのだが···。」
「魔族が大軍ですぐに攻めてくるわけではないでしょう。散発的なものなら勇者もいますし、私も対応します。それから···強力な助っ人を呼ぶので、戦力的には問題ないかと思います。」
「助っ人···ですか?」
王太子と国王、そして宰相が顔を見合わせる。
「それは、獣人かエルフの冒険者ということですかな?」
「私の知人に超強力な魔法士がいるのですよ。」
「魔法士ですか。それなりの名が通った者であれば、我々からも要請を致しますが?」
「いや、あなた方からの要請では、彼女は首を縦に振らないかと思います。」
「彼女?一体、どなたのことをおっしゃっているのですかな。」
「名をカリスと言います。」
「カリス···そのような魔法士が、我が国にいたであろうか?」
国王の問いかけに、他の者たちは首を振る。
知らないのも当然だろう。
「ああ、彼女は一介の魔法士ではありませんよ。何せ、魔神ですから。」
「···························は?」
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