第二章 亜人の国「清廉なる魔王⑮」
「君はアトレイク様とどういった関係なんだい?」
「アトレイクを知っているのか?」
「むぅ、質問を質問で返すのはダメだよ。」
なんだ?
急に口調がフレンドリーになったのだが。
「あんたが何者なのか、わからないからな。」
「ん~、仕方がないかぁ。私はヴェルザンデイ。運命を司る女神だよ。」
ヴェルザンデイ···確か、北欧神話にあった名だ。この世界に来てから、度々地球の神話や伝承に出てくる名を耳にするが、何か理のようなものがあるのかもしれない。
「もしかして、元はエルフか精霊なのか?」
「あれ?よく知っているね。そうだよ、ハイエルフだった私は神格化して今に至るんだ。」
なるほど。
この国の名前はアースガルズ。これも北欧神話に出てくる王国の名だ。
いろいろと説はあるが、ヴェルザンデイはノルンと呼ばれる運命の女神の1人だ。
北欧神話でのノルンは、世界樹の根本にあるウルズの泉の畔に住んでいたと言われている。
世界樹はエルフにとって、母のようなものだ。
「それで、この国との関係は?」
「この国が創設された時の協力者の1人だよ。」
「この国の創設って、相当前の話だよな?」
「まあ、千年以上前だね。」
「協力者って言うのは?」
「この大陸は、元々が亜人と呼ばれる種族がそれぞれの領域を統治していたんだ。互いに不可侵条約を結んで、干渉することなくね。それが、ある時を契機に勢力図が崩れた。」
「もしかして、人族が関係しているのか?」
「うん。人族は少数だけど、この大陸にもいた。でも、別の大陸から海を渡って移住してくる者が増えてさ。亜人種は人族よりも優れた能力を持つ者が多いんだけど、数が少ない。人族は繁殖率が高いから、やがて圧倒的な数でこの大陸での領地を広げていった訳さ。」
「それが国を成し、今のようになったと?」
アメリカ大陸の開拓期みたいな感じか。亜人を原住民、人族をヨーロッパからの移住者と例えると、似たような経緯になる。
「大雑把に言えばそうだね。私は亜人と人族がもめないように、人族側の相談役を担っていたんだ。一応、その時は賢者とも呼ばれていたしね。」
「それで、後に神格化した訳か。」
「そう。ハイエルフは長命だから、結構な数の王と接してきたけど、中には人族至上主義の王もいたわけさ。その時にここを離れて帰郷しようとしたんだけど、当時に神界の外務大神を務めていたアトレイク様に見いだされて、神格化したってわけ。」
何?
外務大神?
はい?
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