第二章 亜人の国「清廉なる魔王⑭」
「先見の巫女というのは、実在する人間ではないのか?」
とりあえず、周りの反応は無視して、白眼を剥いたままのリーナに質問をしてみた。
「先見の巫女は、代々王家の血族の中から生まれる。今代は彼女がそうだ。」
低く落ち着いた声音で話しているが、白眼が怖い。オカルト映画も真っ青だ。
「え···と、俺も白眼で話した方が良いのかな?」
「································。」
先見の巫女が無言になった。
周囲の者たちは、信じられない生き物を見るように俺を見ている。
「悪い···考えが浅かった。ここにいる者全員が、白眼を剥いて話をすべきだな。」
カオス感満載でいきたい。
あ、先見の巫女···白眼リーナの眉間にシワが···。
「アトレイクにはウケそうな話題を振ったんだが···同じ神の類いじゃないのかな?」
白眼リーナの頬がピクッと反応した。
先見の巫女の正体について、何かを知っている訳じゃない。
ただ、可能性を考えて絞りこむと、行き着くところはそれほど多岐に渡るわけでもなかった。
「王家に縁のある神格化した存在、もしくは神の眷族や使徒といった存在か。何にしても、リーナ自身が特殊なスキルの保持者だとしたら、それほど間違いではないように思えるな。」
あくまで推測の域をすぎないが、この世界で出会った神と関わる人物は、聖女を除いて特殊なスキルを有していた。
相手の善悪を見抜く力。
ミンしかり、俺しかりだ。
リーナに関しては、そういったスキルを持っていたのかは定かではない。だが、感受性が強いという点では、可能性が高いかと思える。
ただのヤンデレの可能性もあるが、彼女の俺に対する心の開き方は、特殊すぎると言っても良かった。
「ん?」
先見の巫女の正体についての考察を半ば独り言のように呟いていると、周囲の雰囲気が突然変化した。
何もない虚空。
真っ白な光だけが視界を覆う。
亜空間とでも言うべきか?
「···神隠しか?」
何となく、これ以上に相応しい言葉はないのではないかと思った。
リーナを媒体にして先見の巫女を名乗る者の正体が神とするならば、俺を変な空間に閉じ込めることは、正しく神隠しと言えるのではないだろうか。
「···君は、焦ることがないのか?」
白眼リーナから発せられていた声が、虚空に響く。
「ん?そういうわけではないが、色々とあったからな。焦っても何も変わらないだろ。」
そうだ···急に異世界に転移させられたと思ったら、英雄だの魔王だの亜神だの天然ジゴロだの変態だのに祭り上げられたのだ。
今さら何を焦れと言うのだ?
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