第二章 亜人の国「清廉なる魔王⑨」
ノックの音がしたので返事をすると、入ってきたのはメイド服姿の女性だった。
「お茶を出させていただきます。」
よく見ると、知っている女性だ。
「メイド服が良くお似合いですね。」
お茶を入れている女性がチラチラとこちらを見ていたので声をかけてみた。
「え···あ、そうですか···ありがとうございます。」
予想外の言葉だったのか、少し慌てている。
「おキレイですよ。」
「え!?は、あっ!」
あまり容姿をほめられることがなかったのか、動揺してカップからお茶を溢れさせていた。
普段は暗殺者のような雰囲気を醸し出していたのでギャップ萌えする。
そう、リーナの護衛であるシュラだ。
この様子だと、警戒のためと言うよりも、面割りのためにメイドに扮していると考えた方が良さそうだった。
溢れたお茶を慌てて拭く姿がぎこちないが、あまり絡まない方が良いと判断した。
お茶を入れ直しているシュラから視線を外していると、再びノックの音が聞こえ、1人の男が入ってきた。
「失礼。近衛親衛隊のダニエル·マクガーンだ。警備のために入室させていただく。」
ムニエル君だった。
残念ながら、シュラと何やら目線で合図をしているのがバレバレだ。
···いや、あまりこっちを見るな。
こいつも面割りのために来たのだろうが、対象を注視するのはどうかと思う。
···ヘタクソかっ!?
「私のことをずいぶんと見られていますが、何かついていますか?」
あまりにも稚拙な行為だったので、つい絡んでしまった。
今この場では正体をバラす気はない。国王が何を言ってくるかで、話の振り方を変えるつもりだった。
「いや···知っている奴に似ているんだ。髪の色は違うが、背格好や瞳の色が同じで···。」
「いや、悪いが俺にはそういった趣味はないからな。」
「え?」
「良くある手口だろ。知り合いに似てるって言って口説く奴。ホモの常套手段だ。」
「いや、いやいやいや!俺はホモじゃない!!」
「···································。」
シュラがダニエルを見て引きぎみだ。
普通に考えたらわかりそうなものだが、シュラは意外と生真面目だし、純粋だからな。
「そうか···両方いけるくちか。ヤバイな。近衛親衛隊は汚れているのだな。」
「や、ちょっ、違う!俺個人はともかく、近衛親衛隊は汚れてはいない!!」
「···俺個人はともかくって言ったな?そうか、認めてしまったか、ホモエルくん。」
「「!」」
ギョッとした顔で、シュラとダニエルが俺を凝視してきた。
コンコン。
そのタイミングで、また別の誰かが来てしまったようだ。
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