第二章 亜人の国「清廉なる魔王⑥」
「トゥーラン隊長殿。そろそろ始めてもらってもよろしいでしょうか?」
「煽りに煽って···頭を疑うよ。」
「すべて事実だと思うが?それで怒るのであれば、実力で示せば良い。」
トゥーランは俺の言葉に深いため息を吐き、しばらくしてから御前試合の開始を告げた。
「では、これより御前試合を開始する。互いに全力を尽くし、御前で恥じない闘いをするように。それでは、始め!」
トゥーランの合図の直後、デカブツ騎士は木盾を前に構え、猛々しい掛け声と共に間合いを詰めてきた。
「くらえっ!?」
シールドバッシュ。
木盾に全体重を載せたタックル。
が、踏み込んだ先に俺はいない。
「何っ!?」
「バカじゃないのか?」
俺はデカブツ騎士の背後から木剣を高速で打ち据える。
気を置き、シールドバッシュのタイミングで背後に回ったのだ。
ガキッ!
首筋や横っ腹を打つが、予想通り木剣が折れた。
振り返りざまに剣を横凪ぎにするデカブツ騎士の攻撃をスウェーバックでかわしながら、折れた剣の残骸を投げつける。
「終わりだ。」
木盾で剣の残骸を弾いたデカブツ騎士が、剣を振り下ろしてきた。
円を描くように斜め前方に移動する。
鎧の左肩を掴み、デカブツ騎士が剣を振り下ろすために回した腰の動き合わせて同じ方向に跳んだ。
自らの動きを強制的に加速されたデカブツ騎士は体勢を崩し、背中から倒れそうになるのを堪えたが、軸足の膝裏に回し蹴りを入れて倒す。
すぐに片腕をとり、腕ひしぎ逆十字固めで関節を極めて折る。
ボキッィィ!
「ぐ···があぁ···。」
降参もストップの声もないので、折った腕を捻って激痛に悶えさせ、すぐに立ち上がって兜に踵を落とす。
ガッ!
反対側の腕を同じように極め、折る。
ボキッィィ!
まだ誰も何も言わないので、次は両足を持ち···。
「ス、ストップだっ!そこまでぇっ!!」
「はい、お疲れ様。」
俺は平然と立ち上がり、背中の埃を払った。
唖然とした顔で注目をされているが、気にしない。
「勝者、冒険者ナミヘイ!」
トゥーランの声が響くが、誰も何も言わない。
「それで、本試合の相手はどなたですか?」
木剣が折れても試合を中断させようとしなかったので、意趣返しをした。どんな反応が出るかで、この御前試合の意味を確かめてみたかったのだ。
「な、何?」
「フルプレートアーマーの装備に、木剣が折れても試合を続行された。これは準備運動のために、実力のない若手騎士を仕向けられた配慮と考えますが、正直なところ弱すぎます。本番の御前試合では、国一番の騎士が出てこられるのですよね?ああ、木剣ではなく真剣でかまいませんよ。」
「·····························。」
「次は手加減なしで、本気でやりますから期待してください。」
誰一人、言葉を発さなかった。
そして、顔をひきつらせた将軍の顔がおもしろかった。
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