第二章 亜人の国「清廉なる魔王⑤」
「時間は無制限。魔法の使用は可能だが、放出系は禁止だ。どちらかが降参するか、戦闘不能と判断されれば勝負は決する。」
放出系の魔法が禁止ということは、身体能力強化や硬化魔法を中心に使ってくるということだ。
フルプレートアーマーを装備され、さらに硬化魔法を使われるとなると、木剣でダメージが入るわけがない。
要するに、最初から勝たせる気はないということだ。
「了解した。」
「···ずいぶんとあっさりとしているが、本当に良いのか?」
「拒否権はないのだろ?」
「·································。」
「騎士道とは何なのだろうな。」
トゥーランは何も言わずに踵を返した。
苦々しい表情を見る限り、この御前試合の内容を納得している訳ではないと見える。
だが、それを進行している時点で、この理不尽に加担をしているのと同じだ。
だから、王族や貴族のような特権階級は好きになれない。
「ふん、魔法すらまともに使えないとはな。」
対戦者が話しかけてきた。
兜で顔は見えないが、その言葉には嘲りしかない。
「まあ、数秒で終わるだろう。」
「ほう、分をわきまえているようだな。安心しろ。すぐに終わらせてやる。」
「因みに、あんたは近衛親衛隊と、王国騎士団のどちらに所属している?」
「王国騎士団だ。」
そうか、フェミリウム将軍の部下か。
近衛親衛隊は国王の直属のようだ。少数精鋭であることが多いので、おそらくこのような試合には参加しないのだろう。
「了解した。国王陛下の前で恥をかかないようにがんばれ。」
「···貴様、死にたいようだな。」
シュコ~、シュコ~と兜から空気が漏れる音を出しながら話す男の声に殺意が混じる。
「この国の騎士はずいぶんと荒いんだな。俺が知っている騎士道とは、民の模範になるものだったはずだが。」
「黙れ!下賎なる者が騎士道を説くな!!」
一階のあらゆる所から、一気に殺気が膨れ上がる。
この国の騎士団は、いろいろと問題を抱えているようだ。
おもしろい!早く続きが読みたい!と思っていただければ、広告を挟んだ下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけるとモチベーションが上がります。
よろしくお願いしますm(_ _)m




